2020年の気になる図書館システム関係覚書
2019年中に気になっていて、個人的に注目している図書館システム関係(公共図書館中心)に関する覚書です。独断と偏見でとりとめなく書いています。
システム担当から外れて幾星霜、でも去年は久しぶりに図書館総合展にも行って、面白そうなことも見聞きしたので、忘れないうちに。ちなみに昨年分はこちら。
図書館業務システム関係
業務も扱う品物も、大きく変わっていないのだから、システム自体もそれほど変わるわけもないのだけれど、それでも少しづつ変化はしている模様。
読書履歴(貸出履歴)をシステム上で利用者自身が管理できる仕組みを採用する館が現れている。県立だと福井県立図書館さんとか*1。需要もあるだろうし(あたしも年取って、前に読んだ本のタイトルが思い出せないこともしばしば)、自己情報のコントロール権みたいなものが論ぜられる昨今、当然の流れかと思う。
それにしても、10年くらい前、「図書館の貸出履歴の利用(主にレコメンド)は是か非か、そもそも可能か」が一部で論じられたたことがあったけれど、もう隔世の感がある。少なくとも学問の世界では、図書館のデータ(業務記録)を有効利用しようとする試みが営々と行われている*2 。一方で、図書館自身が、その業務データを自分で分析・活用しようとするところも現れたようで、原田隆史氏の小論*3 の最後で紹介されている。どこの図書館なんだろう。しかし、図書館員も(と言うか現代人の多くが)統計とデータ分析の基礎くらいは身につけないといけない時代の模様。
システムとは直接関係ないけれど、2019年の図書館総合展でシステムベンダーさんのブースを回ったときに特に印象に残ったのは、京セラさんのオーディオブック配信サービスの導入*4。 2020年2月から試験提供とのこと。コンテンツ次第だけど、図書館にもオーディオブックの波が来るかも。
なお、長野県立図書館さんが何やら面白そうな仕様(連想検索とか)でシステム調達してる*5んだけど、気になるなあ。
ちなみに、昨年紹介した砺波市立図書館さんの取り寄せ依頼できる広域横断検索「となみっけ」は、ツイートによると業績アップに貢献している模様でなにより。
ウェブサービス・デジタルアーカイブ関係
ジャパンサーチ(BETA)が稼働を開始したことで、今までデジタルアーカイブも含めたポータル的存在であったNDLサーチは「図書館等が扱う情報資源」を扱う形で住み分けしていく*6とのこと。「情報資源」とあるように、図書館のデジタルコンテンツ(のメタデータ)も、一旦NDLサーチで取りまとめてから、ジャパンサーチに送られる仕組みになる模様。図書館がデジタルアーカイブを作るときには、当然、連携が前提だろうから、これからは、すでにNDLサーチと連携済みのプラットフォームを使うのがますます主流になると思われる。
なお、将来的には、都道府県立図書館がOAI-PMH等による総合目録システムを構築することで、域内の市町村立図書館の書誌・所蔵データを吸い上げ、最終的にNDLサーチから日本全国の公立図書館の所蔵検索が可能になるのかもしれない。(三重県立図書館さんは、OAI-PMHによる横断検索を一部実装済みとのこと*7)ただし、まだまだ先の話。システム間の連携調整はそれなりに大変だし、正直、カーリルローカルを使えば、全国の市町村立図書館の蔵書をかなり早く検索することができるから、どこまで需要があるのかしらん。
あと、2019年の図書館総合展で(個人的に)一番尖ってたのは、このフォーラム*8だったように思う。ここで言われていた、公開されてるはずのデジタルアーカイブのコンテンツがダウンロードできない、できても解像度が低い、そもそもデジタルになってないものが多すぎる、図書館側がデジタルを使いこなす利用者に対応できていない、などなどのご指摘はいちいちごもっともで、ぐうの音も出ない。うう、がんばりますので長い目で見ていただけると……。コスト、著作権、コンテンツの管理(「お宝」を勝手に「使われる」ことへの警戒感)など、問題は山積してるけれど、それが少しずつでも表面化して、共有されて、解決していけるような流れが来ると良いなと思います。
まあ、本格的なデジタルアーカイブが、一般的な公共図書館にはまだまだハードル高いのは事実。昔々、上田市情報ライブラリーさんが地域資料と思われる注連飾りの作り方の小冊子をスキャンして公開してたことがあった(現在は消失*9)。たぶん、コスト的には殆どかかってなかったはず。今必要なのは、こういう地域密着な資料のささやかなデジタル公開なんじゃないかなと思ったり。
あと、これも総合展で見た「みんなで翻刻」のくずし字文字認識AIの精度にはびっくり。これ、いわゆる地域新聞の翻刻・索引化にも応用できないかなあ。地域新聞のデジタル画像を持ってる(そして死蔵してる)図書館は少なくなさそうだし、AIとクラウドソーシングで地域の新聞を翻刻する、「みんなで地域新聞翻刻」とかできるといいなあ。
電子書籍サービス関係
電流協さんによると、2019年10月1日現在、電子書籍サービスを導入している図書館は、89自治体、86館とのこと。(ちなみに昨年は81自治体、78館だった。)まあ、伸び方も例年どおり。
年末に、電子書籍サービスの大手OverDriveを、親会社である楽天が売却*10、というニュースが飛び込んできた。必ずしも日本での成績が振るわないから、というわけでもないみたい*11。日本への影響はあるのかないないのか、よくわからないところ。
ちなみに、年末に田舎に帰省して、餅つきしてたとき(このくらいの田舎だと思ってください)に、手伝いに来てた近所のおばちゃんが、「最近、(紙の)本をとんと読まなくなって。代わりに「dマガジン」ばっかり読みよる。」って言ってた。世の中、着実に変わってる模様。
おわりに
一年立つのは早いなあ。去年これしか書いてないので今年はなんとかしたい……です。
*1:2020年1月8日追記、網羅的に調べてるわけじゃないので漏れ多数。例えば、岐阜県図書館でも。カレントアウェアネス・ポータル 2020年12月19日 岐阜県図書館、ウェブサイトをリニューアル:スマートフォンでの貸出が可能に
*2:例えば、岸田和明「図書館利用データの解析とその活用」(「情報の科学と技術」69(3) p106-110 2019)を参照。
*3:原田隆史「《座標》図書館の評価」(『図書館界』71巻2号 2019.6)
*4:カレントアウェアネスポータル 2019年11月12日:京セラコミュニケーションシステム株式会社、公共図書館システム「ELCIELO」と株式会社オトバンクの「audiobook.jp」を連携させたオーディオブック配信サービスの提供を開始へ
*5:WARP 2019年11月4日保存:県立長野図書館業務コンピュータシステム及び機器一式に関する公告
*6:川瀬直人「NDLサーチのこれまでと今後」(PDF直リンク)(第21回図書館総合展フォーラム「国立国会図書館サーチのこれから:書籍等分野・図書館領域のつなぎ役として」 2019年11月)
*7:垣内志織「NDLサーチ連携候補機関からの事例報告;三重県総合目録の現状と今後の展望」(PDF直リンク)( 第21回図書館総合展フォーラム「国立国会図書館サーチのこれから:書籍等分野・図書館領域のつなぎ役として」 2019年11月)
*8:第21回図書館総合展フォーラム「地域資料とデジタルアーカイブのミッシングリンク-図書館の底力への期待-」(2019年11月)」
*9:InternetArchive:「インターネット版「注連飾りの作り方」」
*10:カレントアウェアネスポータル 2019年12月25日:楽天株式会社、同社傘下で電子書籍サービスを手掛けるOverDrive Holdingsの全株式を売却へ
*11:
HON.jp:大原ケイのアメリカ出版業界解説「楽天からオーバードライブを買ったKKRのリチャード・サーノフ氏は何者でどういう意図なのか?」
2019年の気になる図書館システム関係覚書
2018年中に気になっていて、これからも個人的に注目していきたい図書館業務システム(主に公共)、ウェブサイト及びサービス、デジタル資料などについて、ざっとまとめる。システム担当から外れてはや2年なので、最新情報を追っかけてるわけではまったくないのだが、こういうのをものしてると色々教えていただけることも多いので。
なお、主に公共図書館を対象とした、2019年1月27日現在のお話です。ちなみに昨年のはこちら。
図書館業務システム関係
書影付きのウェブOPACが珍しくなくなってきた。書影については、多くがGoogleブックス由来と思われる。OpenBD由来は野田市立図書館さんくらいか。2018年6月から、国立国会図書館サーチのAPIでも書影が扱えるようになったのだが、新刊中心のせいか、利用している館はまだない模様。
(2019年1月28日追記:BOOKデータASPサービス(日外アソシエーツ)の採用館が40館以上あるとのこと。コメントありがとうございます。)
書影があると、資料の中身や鮮度が直感的に伝わるので、検索の利便性は大きく向上すると思う。とはいえ、書影表示はたいていオプションなので、どのくらい効果があるのかのエビデンスがないと、なかなか追加予算も取りにくい。どこかが調べてくれないかしらん。
カーリルさんとこは相変わらず元気。Unitrad API採用の横断検索サイトは20を超えた模様。(カーリルさんから貰ったパンフより) 複数の自治体による広域連携の動きがあるけれど、例えば、県境を越えた生活圏を作ってるようなところで、Unitrad APIを使った横断検索サイト作ったりすると面白いかも。
また、同じくUnitrad APIを使った砺波市立図書館のOPAC「となみっけ」は、なかなか衝撃的。館内もウェブも同じシンプルな画面で、自館だけでなく、県内図書館の蔵書、果ては近県分の所蔵まで一度に検索してしまう。いわば横断検索をメインに据えた形。おまけに、自館になかった資料には、所蔵館が記載された予約カードをPDFで出力するボタンが出る。相互貸借は、いろいろ調整が必要なサービス(借受先の分散とか、購入リクエストへの切り替えとか)だけど、なにより、よその図書館から借りられることをはっきり「見える化」したのは英断だと思う。導入の経緯と運用の状況を聞いてみたいところ。
あと、日立さんは図書館システム(の販売)からは撤退とのこと。寡占がさらに進むなあ。図書館システムのデータ移行問題検討会の報告書も出たけど、データの共通化は、寡占化とクラウド化とで自ずから進んでいくのかしらん。
ウェブサービス関係
著作権法の改正により、2019年1月1日から「電子計算機による情報処理及びその結果の提供に付随する軽微利用等(第47条の5関係)」の規定が改められた。要はGoogleブックスにおけるスニペット表示のたぐいが条件を満たせば無許諾で可能となった。Googleブックスによる書籍の全文検索は、もはやレファレンス業務に必須(当方調べ)。1月1日から強化されるかもと淡い期待をしたけども、特に変わった風もないのでがっかり。今後に期待。
国立国会図書館オンラインがスタートして一年が経過した。当初はちょっと重いかなと思ったのだけれど、今は特に違和感もなく使えている。リサーチ・ナビの目次データベースも検索対象になってるのはありがたいのだけど、全部ではない、という話も聞くので、調べものには結局リサナビも手放せない。
国立国会図書館デジタルコレクションもマイナーチェンジして、目次から本文のコマへのリンク機能やらが追加されて便利になった。2014年に図書館向けデジタル化資料送信サービスが始まったときは、膨大な資料(でも古いのばっかり)を前にして戸惑いのほうが強かったけれど、本家でも「明治から昭和前期に刊行された写真集」のような、テーマで資料を簡単に探せるページができてる一方、福岡県立図書館さんの「国立国会図書館デジタルコレクションに含まれる福岡県内で出版された図書」のように、外部からデジコレの資料を使いやすく再編集することも行われるようになってうれしいかぎり。なお、国会図書館さんでは今も地道な著作権者の調査が続けられており、著作権者情報の公開調査なんてのも行われている。例えば、都道府県立図書館の郷土人物情報データベースを使ったら、案外簡単に著作者の没年が見つかることもあるので、ぜひご協力を。
そしてもうすぐジャパンサーチ(仮称)が試験公開される。分野や館種を超えた横断検索で、どんなものが見つけられるようになるのか、楽しみ。個人的にはオープン化(メタデータ含む)という概念が、これを機にMLA界隈にさらに定着するといいなと思う。
デジタルアーカイブ関係
デジタルアーカイブのオープン化が少しづつ進んできた。ARGの岡本さんの調査によると、2018年9月時点で、都道府県立図書館のデジタルアーカイブで、パブリックドメインまたはクリエイティブコモンズを採用している図書館は4館とのことで、今後も増えていくと思う。
ただ、クリエイティブ・コモンズ適用すれば全てはOK、という単純な話でもない。ウェブ上にアップロードした古典籍・古文書類(著作権消滅済み)には、所有者の使用権は働かないと思われるので、利用に何らかの条件を付すこと自体が法的にはナンセンス。とはいえ、お金をかけて電子化して公開して維持管理するコストや責任は当然発生するわけで、せめて、使用の連絡とか所有元の表示くらいはさせてほしい、というのもごもっとも。提供元にもメリットのある利用条件とその表示のさせ方については、永崎研宣さんの「オープンライセンス表示に一工夫を」をご参照ください。検討が進むといいな。
電子書籍関係
電流協さんによると、2018年10月現在の公共図書館での導入館は78館(自治体数では81)。2017年の報告書では65館だったので、毎年10館強のペースで増えてることになる。自治体数のほうが多いのは、兵庫県の4市町が合同で運営している「播磨科学公園都市圏域定住自立圏電子図書館」てのがあるため。こういう、生活圏で一括契約というのが今後増えるかも。
2019年4月からは、学校図書館向けに定額制の電子書籍サービスがはじまるというし、そろそろ公共図書館にも本格的に導入が進むかも……、まあ、数年はないか。むしろ、書庫問題に悩む都道府県立図書館が、紙の資料費減らして電子書籍サービス導入、なんてのが意外と現実味があるかも。
おわりに
先日、国会図書館の人のお話を聞く機会があったのだけど、デジタル化関係とかで、自前のツールをPythonで作ったりするとのこと。当方、BASICで挫折してから幾星霜、な人だけど、今年は何か学べるといいなあ。
レファ協DIY事例あれこれ
DIYとかサバイバル、手持ちのもので自分で何とかする、が好きだ。
ぶきっちょでモヤシっ子(死語)なので、自分では全くできないし、する気もないけど、興味だけは妙にある。なので、レファレンス協同データベースでその手の事例を見つけると、気になってつい見てしまう。果ては勝手にDIY事例と名付けて密かな楽しみにしている。
DIY事例は、趣味的なものから、生活・ビジネスに活かすためかなと思われるものまで、多種多様。特に、衣食住に関するものは多い。
- フラダンスの衣装を自作したい。(成田市立図書館)
- 下駄の作り方を知りたい。(香川県立図書館)
- さけるチーズを自分で作ってみたい。作り方がのっている本はあるか。(南アルプス市立図書館)
- 自分で掘ったタケノコで、本格的なメンマを作る方法(吹田市立中央図書館)
- かまどの作り方の本はあるか(香川県立図書館)
- コンクリートで庭をうちたい。やり方の載っている本はないか。(蒲郡市立図書館)
レファ協に事例として登録されるということは、同じ質問がよくなされる、他館や他のお客様の参考になる、ということもあるだろう。けど、質問や調査過程が風変わりだったり、面白かったりするということもまたある。DIY事例だと、なんでこんなものを?というような事例も多い。
- いろいろな料理の食品サンプルを自分で作ってみたいのだが、参考になる資料はあるか。(岡山県立図書館)
- ホームセンターなどで売られている鉄の塊から、スプーンやフォークなどを手作りする作業工程などが詳しく書かれている資料を探している。(国立国会図書館)
- 木靴を自分で作ってみたいので、作り方がわかる資料がほしい。フランス式のsabotでなく、オランダ式の方がいい。(岐阜県図書館)
自分で〇〇を作ってみたい、が昂じて?、〇〇のための道具を作ってみたい、なんてのもある。
- 紙芝居の台の作り方がわかる本はないか。木製の舞台をご自分で作るために、図面のようなものをお探しとのこと。(高崎市立中央図書館)
- 臼と杵の写真が載っている本を探している。できれば自分で作ってみたいので、工程も載っているものがよい。(さいたま市立中央図書館)
- (うどんとかをのばすのに使う)麺棒を手作り(木工)したいと思ってます。作り方が書いてある本を探してます。(北海道立図書館)
DIY事例に限らず、レファ協の事例をつらつら眺めていると、図書館側の、緻密な調査や快刀乱麻の回答もさることながら、お客様の質問の意外さに驚かされることがしばしばある。そんなもの自分で作ろうとか思う人がいるんだ、とか、そんなこと考えたこともなかった、とか。実際の現場でも、質問があってはじめて、そのことが書いてあるこんな資料があるんだ、と気付かされることが多い(新米レファレンサーなもんで)。
レファレンスって、お客様との相互作用で成り立ってるんだなと、あらためて思う今日コノゴロ。
蛇足:DIYな質問を実際に受けたときよく使うのは、目次情報が検索できるWebcat Plus Minus。同じくNDLデジコレも目次が検索できて便利。服の仕立て方なんかは、家で縫うのが当たり前だった頃の古い本のほうがちゃんと載ってたり。食品、農産物、手仕事・山仕事は、なんといってもルーラル電子図書館。なんでも自作しちゃうお百姓さんのバイブル、「現代農業」の記事は最強。あと、児童書は何かと写真やイラストが多いし、基本的なことが押さえてあるので重宝する。これまた農文協さんの「食べもの絵本」のシリーズとか。
2018年の気になる図書館システム関係覚書
2017年中に気になっていて、これからも個人的に注目していきたい図書館業務システム(主に公共)、ウェブサイト及びサービス、デジタル資料などについて、ざっとまとめる。昨年からシステム担当ではなくなってしまったし、総合展とかにも全然参加できていないので、情報偏ってますがあしからず。なお、主に公共図書館を対象とした、2018年1月10日現在のお話です。ちなみに昨年のはこちら。
図書館業務システム関係
例によって大きな変更はないものと思われる。クラウド化のさらなる進展くらいか。図書館って、基本保守的なところだし、業務自体も今のところはまだ旧態依然なので、業務システム自体の進化は滞っているように思われる。でも利用者は確実に変わっているので、せめてインターフェースくらい今風に、例えば音声入力・フリック入力に標準対応したOPACとかは普通にどんどん出てきて欲しい。
また、マイナンバーカードの図書館利用実証実験が2017年秋から始まり、導入館も現れている。ざっとググったかぎり、都道府県立では京都府、愛媛県、鹿児島県が導入済みの模様。各館のシステム更新に伴い、(需要の有無にかかわらず)採用館が増えてくるものと思われる。
横断検索については、都道府県立でカーリル Unitrad API(以下Unitrad API)を採用したとこが増えてきた。京都府に続き、山口県と鹿児島県が採用。その他、長野県でも、既存の横断検索とは別に試験導入している。こちらもシステム更新が進むに連れて、採用館が増えてくるものと思われる。また、都道府県レベル以外でも、「さばサーチ」(鯖江市など)、「まるはち横断検索」(名古屋市内の公立・大学・専門図書館)とかの、生活圏内の図書館を横断検索するサイトは面白い取り組みで、確かに需要ありそう。
なお、Unitrad APIが高速なのは散々言われてることなので、検索結果がパーマリンクになること、URLの引数の書式がシンプルなこと(”/?q=xxxx”でOK)は特筆しておきたい。あと、Unitrad API採用の横断検索サイトは見た目が良い(大事)。フォームもチェックボックスも控えめだし、アイキャッチもかわいいもの、シックなものが多い。さばサーチのアライグマと、恩納村のぞうさんがいい感じ。一方で、Unitrad APIは主にISBNで同定する仕組みのため、ISBNのない資料の書誌割れの対応が課題。対応策となる「L-Crowd「都道府県総合目録の将来像に関する研究プロジェクト」」の成果が待ち遠しいところ。
なお、システム更新の円滑化を目的に協議していたJLAの図書館システムのデータ移行問題検討会は、今年3月まで延長して存続することとなった模様。一筋縄ではいかない問題だけに、じっくりと成果を練り上げて欲しい。
ウェブサービス関係
書誌と書影が使えるということで話題になったOpenBD、いまのところシステムに組み込んでるのは野田市立図書館の新着図書RSSくらいか。Googleブックスの書影を使ったOPACもそう珍しくなくなったことだし、ベンダーさんに採用の動きはないのかな。
(2018年2月21日追記訂正:野田市立図書館の蔵書検索でもOpenBD(とGoogleブックス)の書影を使用中とのこと。コメントありがとうございました。)
国立国会図書館では、NDL-OPACの後継、国立国会図書館オンラインがつい先日、供用開始した。今のところ、かなりレスポンスが重たいのが難点だが、とても見やすくなって好感持てる。とくに、デジタル化資料に目立つアイコンがついて見分けやすくなった。また、リサーチ・ナビでしか検索できなかった「目次データベース」(大量の参考資料の目次が登録されていてむっちゃ便利)も統合されるとのことだったが、いまいち効果が見えない。まだインデックスされてないのかも。
電子書籍サービスも相変わらずか。『電子図書館・電子書籍貸出サービス 調査報告 2017』によると、公共図書館での導入館は65館。2016年版では53館(注:リンク先PDF)だったので、10館強の増加、まだまだ少ない。いわゆる障害者差別解消法対応を謳って普及を目指す、という話もあったけど、障害者にとって使いやすいサービスではまだない、との話も聞く。昨年、某社のデモ版の試用をさせてもらったことがあるけれど、使い勝手云々以前に、入ってるコンテンツの少なさにゲンナリした記憶が。デモ版なんだから、むしろこんなに入ってます、使えます、ってのを見せないといけないんじゃないのかな、とよそのことながら心配になった。とはいえ、世間様の電子書籍への移行は進んでるらしいので、どこかで導入に踏み切らないといけない訳で、隔靴掻痒。
なお、「横浜市立図書館ウェブサイトにおける広報効果の現状報告 : ウェブ解析ソフトによるアクセス分析」という文献が、「現代の図書館」に載っていた。何の事はないGoogleアナリティクスを使ったアクセス分析の論文なのだけど、図書館で同様の文献はとても少ない気がする。Googleアナリティクスを導入している図書館サイトは結構あるはずなのだが、ちゃんと使ってるところはどのくらいあるんだろう。
デジタルアーカイブ関係
デジタルアーカイブも随分増えてきた。思うに、最近のトレンドは、使い勝手のよさ。最近、リニューアル公開された青森県立図書館デジタルアーカイブがよく表しているんだけど、システム的な使い勝手は言わずもがな、コンテンツの利用条件がすごく整っていて、パブリックドメインは自由利用可、そうでないものも条件を満たせば利用可、余計な申請手続きは不要。これが当たり前になって欲しい。総務省の 「デジタルアーカイブの構築・共有・活用ガイドライン」(注:リンク先PDF)でも、「公的機関の、又は公的助成により作成されたデジタルコンテンツについては、無償での再利用に問題のないものについては、原則として、CC0又は(政府標準利用規約と互換性のある)CC BYを適用することが求められる」とあるのだから。これができて初めて、ジャパンサーチ構想やIIIFみたいなものが生きてくる。
最後に
LRGの19号に載った「特集 カーリルがハックする「図書館システムの現在」」には考えさせられることが多かった。図書館員の常識は、一般の非常識。『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』でも読むべきか。(と思ってNDLサーチ引いたら、あんまり持ってる都道府県立ないんでやんの(泣))
日常的にウェブやスマホ、PCに接している我々図書館員なのに、いまだに「システムに強い人」は希少種な状況は変わらない模様。少しでも改善するために、何ができるのか、考えていきたいと思う今日コノゴロ。
都道府県図書館が構築したデジタルアーカイブの利用条件に係る一所感~PD作品の画像は誰のものか~
2017年5月4日付けの朝日新聞に、「日本の美術館は、所蔵するパブリックドメイン作品の画像の貸出しに慎重」という主旨の記事が載っていた(要ログインだし、どうせ消えるのでリンクしない)。調査した公立美術館のほとんどで、パブリックドメインになっている作品にもかかわらず、その画像の利用が申請制になっていて、自由に使えない、とのこと。早速、図書館の状況についても調べてみた(GWで暇だったので)。
もちろん網羅的に調べるわけにもいかないから、都道府県立図書館のウェブサイトで公開されているデジタルアーカイブについて、収録されたコンテンツの二次利用、すなわち、出版物への掲載、放送等の可否と手続きを調査対象とした。
各都道府県立図書館のウェブサイトトップからリンクされている(WEB公開されている)デジタルアーカイブを対象とし、館内公開のみのものは除いた。また、HTMLに画像を張り付けただけのものでも、コンテンツ全体が利用できる場合は対象とした。なお、自館作成のコンテンツ(館報や要覧の類)のみを公開しているものは対象としなかった。
結果は以下のとおり(2017年5月4日調査)*1
- 条件を満たせば申請不要:5自治体
- 申請が必要:23自治体
- 問い合わせが必要:6自治体
- 不明:7自治体
- デジタルアーカイブなし:6自治体
結果をまとめたものはこちら。
47自治体のうち、デジタルアーカイブが見当たらなかったのは6自治体。残り41自治体は何らかの形でデジタルアーカイブを公開していた。ざっと見る限り、ほとんどのデジタルアーカイブの主要なコンテンツは、古典籍などのパブリックドメイン作品と思われた。
にもかかわらず、公開自治体のうち、条件を満たせば手続不要としているのは、たったの5自治体(宮城県、秋田県、山形県、神奈川県、高知県)。大多数となる23自治体が、営利非営利を問わず「要申請」扱い。条件を全く示さず、ただ「問い合わせてね」としてるところも6自治体。美術館と似たり寄ったり。もちろん、まだ著作権が残っているコンテンツが収録されている場合もあるので一概には言えないが、図書館も、全体として、パブリックドメイン作品の画像等を使わせることに「慎重」のようだ。
おまけに、利用条件を明示してないとこが7つもあるんだけど、どうなんだろう。また、サムネイルやメタデータの利用について明示しているとこは、1つも見つけられなかった。これもどうか。
たぶん、中の人たちとしては、できる限り積極的に利用してもらいたいと思っているに違いない(と思いたい)。それでも、利用を申請制にしたり、問い合わせを求めるのは「不適切な」利用(郷土の偉人の画像が、飲み屋の看板に使われるとか)を避けたいとか、利用実態を把握したい、ということなのだろう。まあ、利用実態の把握をいうのならば、どの程度利用申請があるのかについては、公表して欲しい(レファレンスにも役立つし)。例えば、大阪府立中之島図書館のように。
それから、制限する根拠もよくわからない。法にはとんと疎いのでナンだけど、著作権が消滅し、パブリックドメインとなった作品(のみ)を収録した資料については、資料(有体物)をコントロールする権利(所有権)は所蔵する図書館が持っているとしても、その画像、すなわち無体物をコントロールする権利はなくなっている、とみなされるのではないかと思うんだけど、どうなんだろ、教えてエライ人。
ちなみに、申請不要としている館の多くは、クリエイティブコモンズを(全てのコンテンツではないにせよ)採用している(宮城県、秋田県、神奈川県、高知県の4自治体)。また、大阪府はちょっと特殊で、基本、申請が必要としてるけど、オープンデータの一環としてごく一部の資料のみCC BYで提供している(この調査では要申請とみなした)。また、コンテンツの有償での二次利用をうたった「おおさかアーカイブス」なんてのもある。これはこれで、いろいろ大変そう。
国の報告書「知のデジタルアーカイブ―社会の知識インフラの拡充に向けて―」なんかを眺めるに、デジタルアーカイブは、自分とこで作っておしまい、ではなく、連携も含め、どのように使ってもらうか、を考える時期に来ているように思われる。そのために、アーカイブされたコンテンツについて、何を、どこまで、どう使えるのかを明示する必要があるように思われる。今後の課題、ということにしておく。
都道府県図書館が構築したデジタルアーカイブ及びその利用条件一覧(2017年5月4日現在)
このページは、都道府県図書館が構築したデジタルアーカイブと、その利用条件についてまとめたものです。調査時点は2017年5月4日現在です。
各都道府県立図書館のウェブサイトトップからリンクされている(WEB公開されている)デジタルアーカイブを対象とし、館内公開のみのものは除きました。また、HTMLに画像を張り付けただけのものでも、コンテンツ全体が利用できる場合は対象とし、自館作成のコンテンツ(館報や要覧の類)のみを公開しているものは対象としていません。
それぞれ、都道府県名、デジタルアーカイブ名、その利用案内のページへのリンク(リンクがあるもののみ)、利用案内に記載されたコンテンツの二次利用(出版物等への掲載許可等)に関する記述をまとめています。
調査には慎重を期しましたが、誤りがありましたら申し訳ありません。なお、この調査をもとに、こちらのエントリーを書きました。
北海道
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- 北方資料デジタル・ライブラリーの利用案内ページ
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青森県
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- デジタルアーカイブの利用案内ページ
- 掲載等については問い合わせ必要
岩手県
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- 掲載等については申請必要
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- 不明
宮城県
- 宮城県図書館古典籍類所蔵資料
- 利用についてはトップページ下部に記載あり。
- WEB利用は自由、出所の明示、改変不可
- 東日本大震災アーカイブ宮城については、収録コンテンツの多くが著作権保護期間中と思われるため、調査対象としない。
秋田県
- 秋田県立図書館オープンライブラリ
- 各コンテツのビューアにCC BY表示
- デジタルアーカイブ
- 不明
山形県
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- デジタルライブラリーの利用案内ページ
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福島県
- デジタルライブラリー
- 不明
茨城県
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- 利用についてはトップページに記載あり。
- 掲載等については申請必要
栃木県
- 栃木県立図書館デジタルコレクション
- 利用についてはトップページに記載あり。
- 掲載等については申請必要
群馬県
- デジタルライブラリー
- デジタルライブラリーの利用案内ページ
- 掲載等については申請必要
埼玉県
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- 利用についてはトップページ下部に記載あり。
- 掲載等については申請必要
千葉県
- 千葉県デジタルアーカイブ
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東京都
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- 江戸・東京デジタルミュージアムの利用案内
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神奈川県
- 神奈川デジタルアーカイブ
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- 掲載等については申請必要
- 神奈川県行政資料アーカイブ
- 神奈川県行政資料アーカイブの利用案内(PDF直リンク)
- 自由、一部CCで制限あり
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- 条件を満たせば申請不要
新潟県
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- 越後佐渡デジタルライブラリーの利用案内ページ
- 掲載等については申請必要
富山県
- 古絵図・貴重書ギャラリー
- 利用についてはトップページに記載あり。
- 掲載等については申請必要
石川県
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- 利用についてはトップページに記載あり。
- 掲載等については問い合わせ必要
- 貴重資料ギャラリー
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福井県
- 福井県文書館・図書館デジタルアーカイブ
- 利用についてはビューア下部に掲載あり。
- 掲載等については申請必要
山梨県
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- 山梨デジタルアーカイブの利用案内ページ
- 掲載等については申請必要
長野県
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- 信州デジくらの利用案内ページ
- 掲載等については申請必要
岐阜県
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静岡県
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- ふじのくにアーカイブの利用案内ページ
- 掲載等については申請必要
愛知県
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- 絵図の世界の利用案内ページ
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- 利用についてはトップページに記載あり。
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三重県
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- 利用についてはトップページに記載あり。
- 掲載等については問い合わせ必要
滋賀県
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- 近江デジタル歴史街道の利用案内ページ
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京都府
デジタルアーカイブなし?
大阪府
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- おおさかeコレクションの利用案内ページ
- 掲載等については申請必要、一部CC適用資料あり
兵庫県
デジタルアーカイブなし?
奈良県
和歌山県
デジタルアーカイブなし?
鳥取県
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- 不明
島根県
- しまねデジタル百科
- 不明
岡山県
- デジタル岡山大百科
- デジタル岡山大百科の利用案内ページ
- 掲載等については申請必要
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