BEAYS(新装版)

本と図書館のことについて、つらつら書いてゆくblogです。

ユーロトラックシミュレーター2と読書

ユーロ トラック シミュレーター2(Euro Truck Simulator2,ETS2)というゲームがある。タイトルどおり、大型トラックの運転手として、ヨーロッパの国々をまたいで荷を運ぶ、よく知られたPCゲーム。古いので3Dながら比較的低スペックでも動作し、何よりトラックの挙動や道路(ジャンクションとか)の作り込みが素晴らしいので、遅まきながらすっかりハマってしまった。

こちとら海外旅行経験1回(しかもアジア)のデスクワーカーで地理の成績は最低ランクだったのだけど、ETS2のおかげで、ヨーロッパの道路事情やらトラック野郎(死語)の生態やらに興味が湧いてきて、ちょっと関係する本を読んだりしたので参考(何の?)までにご紹介。

地図帳で地名確認

ゲーム内では、BtoBの物流を担うトラック運転手として、ヨーロッパの都市間を行ったり来たりすることになる。各都市の位置関係やルートはゲーム内のマップでいつでも確認できるし、ナビ(日本語音声付き)もあるので迷うことはないのだけど、車窓から見える山だの川だの湖だの説明がゲーム内にはなく、やっぱり手元に地図がほしい。(いや、GoogleMAP見ろよという話もあるけど、低スペなのでリソースは空けておきたいのです。)

ということで、紙の地図帳の出番。ひとまず『旅に出たくなる地図 世界』で、これはオーデル川?、これはきっとボーデン湖?、などと地名を確認して喜んでた(小並感)。なお、同書は観光情報重視なので、地名確認だけならシンプルかつ大きくて見やすい『ワイドアトラス世界地図帳』のほうがよいかも。ただ、どちらも一般的な地図帳なので、さすがに建造物までは載ってない。ヨーロッパの橋とか塔とかが載ってる本や地図帳を探したんだけどなかった。やっぱり洋書か土木系の専門書かしらん。先学の教えを請いたいところ。

トラックのメカニズムを学ぶ

さて、はじめは雇われドライバーで小金を稼いで、そのうち愛車を買うことになる。当然外車である。ベンツやボルボのようなメジャーなメーカーもあれば、スカニアやマン(ホントはエムアーエヌと読むそうな)のような商業車専門メーカーもある。例によって、シャシーやエンジンをとっかえたり、いろんなパーツを付けたりとカスタマイズもできる。引っ張るトレーラーも色々選べて、冷凍車、車両・重機運搬用、コンテナ運搬用などがあり、トレーラーに応じて運べるもの(つまりは稼げる運賃)が変わってくるので考えどころでもある。とはいえ、現実のトラックのメカニズムはもっと複雑で奥が深いようだ。

『ツウになる!トラックの教本』は、トラックに用いられる技術周りのことを、図や写真でわかりやすく紹介した本。情報は国内メインだけど、トラックの世界はグローバル化されていることもありゲームの理解にも十分役に立つ。また、よくある解説本のような通りいっぺんの説明ではなく、ちゃんと関係者に取材した現場の声が掲載されていて好感が持てる。ゲーム内ではアクセサリー扱いでしかないトレーラーの各種部品とかについても、メーカーの苦労話とかが載っていて、あれはこういう仕組みなのね、とかこういう需要があるからこうなのか、とか、ゲームでは省略されてる要素の知識が得られる。「ごっこ遊び」にはこういう豆知識が大切なのである。なお、この本によると、様々な荷を運ぶ関係上、トレーラー部分は基本オーダーメイドだったものが、最近は、納期の関係もあってシャシーごとレディーメードのものが増えてきてるのだそう。ゲームの世界に近づいているということか。

(日本の)トラック事情を知る

ゲームに慣れてくると、運ぶものを選んで効率よく稼ぐ方法を考えたり、まだ運んだことのないモノ、通ったことのないルートを潰していったりするのが楽しい。高速が通行止めになり(そういうランダムイベントがある。)、大幅なルート変更が必要になって納期に遅れそうになったり、高速でぼんやり巡航しててリアルな眠気に襲われ、事故りそうになったりもするけれど、概ねドライバーとしては一人前な感じが出てくる。(操作アシストつけまくってるので、現実のトラックの運転はとてもできないけれど。) ゲームにはちょっとした経営要素もあって、人を雇ったり支店を増やしたりもできるのだけど、こちらはおまけ要素らしく普通にやってると右肩上がりに成長する。

でも、同乗ルポと業界への取材で最近の日本のトラックドライバー周辺を描いた『ルポ トラックドライバー』を読むと、現実はなかなか厳しい感じ。ドライバーで稼いだお金で一旗揚げる、なんて話も今は昔、現在の業界は「きつい、きたない、危険」に加えて「稼げない」の4Kとも言われるそうで、ドライバーの高齢化が進み、人材不足が深刻とのこと。それでもネット通販の激増を受けて参入してくる個人事業主や、増えつつあるという女性ドライバーの有様が紹介されており、興味深い。また、ドライバー不足を受けた、自動運転や貨客混載などの試みが始まっているとのこと。ゲームにも出てくる、トレーラーを2つ繋げた「ダブル連結トラック」(めっちゃ運転しにくい。)はこれまで日本では未導入だったそうなのだけど、これも導入に向けた実証実験が始まっているらしい。業界の今を知ることができる本だ。なお、トラックの運ちゃんというと、荒っぽいイメージだけど、著者によると穏やかな人柄のドライバーが多いとのことで、確かに、扱うものは大きいけれど、運転にも荷の扱いにも繊細さが求められる仕事なのだから、ある意味当然か。

おわりに

高速道路のジャンクションの写真集とか、ヨーロッパの物流業界事情とかの本があるとよかったんだけど、これまたいいのが見つからなかった。乞うご教授。あと、頻繁に運ぶことになるコンテナについて、その発明をめぐるノンフィクション、『コンテナ物語』を紹介したかった(めっちゃ面白かった記憶がある。)のだけど、今手元になくて読み返せないのでタイトルだけご紹介。

オブリビオンやスカイリムやってるときは、道を歩いてて草花を見つけるとつい目が向いてしまう病にかかっていた。ETS2を始めてからは、路上のトラックが目にとまるようになった。トレーラーとの内輪差を踏まえつつスムーズに曲がったり、器用にバックして搬出口につけたりするトラックドライバーへのリスペクトが止まらない今日コノゴロ。 

2021年の気になる図書館システム関係覚書

2020年中に気になっていて、今後、個人的に注目している図書館システム関係(公共図書館中心)に関する覚書です。独断と偏見でとりとめなく書いています。(ここまでほぼコピペ)

2020年は、コロナ禍をはじめほとんとにいろんなことがあり、特に私的に現在進行形でとてもつらい状況が続いていて、その気分転換に書いています。いつにもまして縮小かつ視野狭い内容ですが、ご容赦ください。なお、昨年のものはこちら。

図書館システム関係

そろそろ勤務先もシステム更新が見えてきたので、昨年はシステムベンダーさんのプレゼンを聞く機会が何度かあり、勉強になった。とはいえ、業務が関わらない(残念ながら)のだからシステムが進化するはずもなく、おお、と思わされるようなものは特になかった気が。まあ、成熟しているといえばしているのかも。

ブラウザベースのシステムは、流石にIEからの脱却が始まっている模様。Edgeでも動きますよ、という声をいくつか聞くことができた。ようやくIEから離れられる。やれやれ。しかし、いまだに商用データベースの多くは、IE11推奨になってて泣ける。特に新聞。IEだと紙面PDFを読みこんだら高確率でコケるんだよね……。

あと、自治体間を超えたシステム統一を検討せよとの話が、上から降りてきたと風のうわさで聞いた。お国が進めるDXとやらの一環かしらん。図書館業務と一口に言っても、ご当地ルールだらけでシステムはカスタマイズ前提の昨今、外圧とはいえ、業務・ルールの共通化が図られるのは良いこと。できるかどうかは別だけど。

ひょっとすると、予約やリクエスト、相互貸借などの各種申込みは原則WEBで受け付け、みたいな流れになって、今まで、「来館&紙に記入」が障壁になっていたお客さんを(よくも悪くも)呼び込むことになるかも。システム仕様書を決めるときは悩むかもなあ。

ウェブサービス関係

相変わらずカーリルさん周りはとても活気がある。Unitrad APIを活用した横断検索が進化して、図書館蔵書だけでなく、地域の博物館の収蔵品や文化財なんかも一度に検索できるようにした例が現れた。松本市図書館さんの「まつサーチ」がそれ。要はExcelシートみたいなリストがあれば検索対象にできるらしい。いろんな応用ができそう。個人的には、日本の公共図書館におけるディスカバリーサービスがここからはじまるのでは、と思わせる。

また、「学校向け蔵書検索サービス」も、可能性を感じさせるサービス。蔵書のリスト(ISBNなど)があれば、無償でOPAC作ります、という恐ろしく気前のいいサービスなのだが、なんと、公民館図書室や、WEBOAPCのない小規模な公共図書館も対象なのだそう。とりあえず都道府県立図書館の協力業務担当者は域内の公民館図書室やら小規模図書館やらに働きかけるべき。

なお、横断検索の実例を横断的に見てみたいと思ったら、Jcrossさんの「横断検索ナビ」が便利。タグで絞り込みも可能。

デジタルアーカイブ関係

ジャパンサーチが2020年8月に正式公開された。まだあまり使いこなしていないんだけど、どんどん多機能かつかっこよくなっていて、連携先も増えてるし、頼もしい限り。

国立国会図書館デジタルコレクションは、2021年1月、ついに全文検索機能が実装された。収録範囲はまだまだ少ないけれど、今後増えていくとのこと。GoogleBook検索では、検索語が載っているらしいことがわかってもスニペットしかなくてどこにあるのか見当がつけづらい(ページ数も間違ってることが多い)んだけど、NDLデジコレなら、うまく行けば原本画像にたどり着ける。これはありがたい。

個人的に大きなトピックだったのは、福井県立文書館さんのデジタルアーカイブ福井で、文化庁長官の裁定制度を活用して明治期の新聞画像が公開されたこと。おまけに、どのようにしてそれがなされたかについての報告*1があるのは嬉しい限り。手法もコストも、やればできるレベルなことが明確になった。なお、ここまで何度も紹介してくださってるのは、「こうすればできるから、みんなやってね、Do you undersand?」という強いメッセージだと受け取るべき、と勝手に思っている。

雑誌「図書館界」の連載「HOT TOPICS〈テーマ1 地域資料とデジタルアーカイブ〉」*2も面白かった。福島さんの「デジタルアーカイブのスリムモデル」が、基礎自治体デジタルアーカイブの一つのスタンダートになるといいと思う。

なお、図書館・デジタルアーカイブと人文学(文学研究)のコロナ禍後の動向と今後の指針については、岡野さんの展望記事*3がとてもよくまとまっていたので是非ご一読を。たとえ泥縄でも、なった縄は実際役に立つし、役に立たせないと。

電子書籍サービス

遅々として進まなかった電子書籍サービスの導入は、コロナ禍にともなう閉館と「新しい生活様式」への対応のために、あれよあれよという間に急進展。電流協さんの調査によると、2021年1月1日現在で143自治体139館が導入とのこと。2020年1月1日現在では91自治体88館だった*4そうなので、50以上増えたことになる。例年、10館増えるか増えないかという状況だったのに。

サービスが広がることはいいことだけれど、以前、光交付金デジタルアーカイブがやたらできたときのように、見切り発車でとりあえず始めました、的な所が多いのではないかと思う。日置さんが指摘*5されているように、今後の継続的な運営に向け、予算確保と収集・サービス方針(紙との棲み分けなど)の策定が大事かも。

あと、ただでさえコンテンツの少ない電子書籍サービス、大阪市立図書館さんのように、こまめで地道な広報活動*6が欠かせない。始めたところからがスタート。

 その他

東京都立図書館さんがLINEのbotを使ったレファレンスの実証実験をしていて(終了済)、なかなか面白かった。AIが簡単な質問に自動応答します、だけじゃなくて、回答に満足いかないときは有人チャットに切り替えらる、という仕組みに、都立さんの覚悟と可能性を感じた。『レファレンスと図書館』の世界が、そのうちチャット上で繰り広げられるようになるんだろうか。

今年の大きなトピックとして、著作権法の改正(予定、詳細は『図書館関係の権利制限規定の見直し(デジタル・ネットワーク対応)に関する報告書』を)がある。これもコロナによる閉館で文献が入手できない、と声から端を発した、複写物をメール等で送れるようにする、との改正(あと、デジコレ(図書館送信資料)がお家で見られるようになるやつも)が行われる見込み。いまのところ、詳細は関係団体のガイドラインで定めることになるとのことで、動向が注視される。送信の際の補償金の金額や徴収方法、対象となる著作物の条件など、かなりモメそうな気も。

お国が何やら声高に唱えているせいで、いったん下火になったマイナンバーカードの図書館における利用についても、一部で動きがあるかも。関係各位はご愁傷さまとしか言いようがない。そんなものより、遠隔複写手数料を電子マネーで払えたり、Googleアカウントで利用者ポータルから電子書籍サービスまでシングルサインオンできたりするほうが、よっぽど「デジタル技術による業務改善」になるのでは、とは思う。

おわりに

どんどんロートルになっている自覚がある今日コノゴロ、新しい動きについていくのが大変。毎年、各学会で「展望」記事を書かれる方々の視野の広さと日々の努力、ほんと尊敬します。

*1: カレントアウェアネス:E2277 文化庁長官裁定制度による明治期地方紙のインターネット公開国立国会図書館サーチ:連携インタビュー第3弾(デジタルアーカイブ福井),田川雄一「文化庁長官裁定制度を用いた地方新聞画像のインターネット公開とその反応」」(「図書館雑誌」115(1) 2021.1 p.26-27

*2:澤谷晃子「No.1 図書館資料のデジタルアーカイブとその活用を考える」(「図書館界」72巻3号 p. 134-138),是住 久美子「No.2 図書館を拠点とした地域資料の編集とデジタルアーカイブの発信」(同 72巻4号 p. 184-188)),福島幸宏「No. 3図書館の未来像のひとつとしての地域資料活用」(同72巻5号 p. 223-227

*3:岡野裕行「敵を見て矢を矧ぐ/矢を矧ぐための敵」(「日本近代文学」103号 p.94-101) 御恵贈ありがとうございました。

*4:The Wayback Machine:電子図書館(電子貸出サービス)実施図書館(2020年01月01日)

*5:日置将之 「座標「コロナ禍における電子書籍の導入について」」(「図書館界」72巻4号)

*6:たとえば、電子書籍のブックリスト「大阪市立図書館 電子書籍EBSCO eBooksで読むSDGs(持続可能な開発目標)」とか面白いなあ。

今どきの中高生は司書の夢を見るか。

コロナのせいで色々シッチャカメッチャカになってるとはいえ、そろそろウチの図書館にもインターンシップ生の受け入れの話が来はじめてる。司書になりたい、図書館で働きたい、という若者がいるのはありがたいこと。

しかし、こないだは、とある集まりで、子供向けの職業紹介本に司書が載ってない、なんて話を聞いた。何しろ正規は限りなく狭き門で、非正規は限りなく労働条件悪い、が長いこと常態化したこの業界、子どもたちの将来の選択肢の一つに、司書が入らなくなってもおかしくない。

というわけで、将来を考え始める中高生向けの職業紹介本で、司書がどのような扱いを受けているか、いくつかご紹介してみたい。といって、関係する本は無数とは言わないまでも、たくさんありそうなので、ウチの図書館のYA向けコーナーに置いてあった本で、目についたものを対象とした。

『中学生・高校生の仕事ガイド 2019-2020年版』

まずは便覧的な奴から。中高生の進路選択に役立つことを目的に、とにかくたくさんの仕事を載せたもの。モノクロで、イラストも写真もないけれど、仕事の掲載数は多い。ちなみに新版が出てるけど、あたしが読んだのはこの版。

「司書/司書補(図書館職員)」の項あり。学校司書、国立国会図書館職員にも言及しつつ、司書の仕事内容を紹介している。ただ、ほかの仕事でもそうなんだけど、給与や待遇についてはあまり記述がない。2003年から民間事業者に業務委託できるようになった、とあるのは指定管理者制度のことかしらん。民間会社に就職して図書館で働いている人「も」いる、という表現もあって、非正規率6割の業界の現状をより詳しく伝えているとはいいがたい気も。

 

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『女子のための「手に職」辞典』

出産、子育てを念頭に、職場復帰のしやすさや子育ての経験が生かせるかなど、女性の働きやすさにフォーカスした仕事辞典。1職業につき見開き2ページで読みやすい。各職業を目指すうえで、読んでおくとよい本・コミックを紹介してるところもありがたい。

「図書館司書」の項あり。勤務形態として、正社員・契約社員などとあって、公務員扱いではないっぽい。(公務員は別枠になってる。)月収15万円程度からで、載っている職業の中では最低ランク。「パート・契約社員として働いたほうが家庭との両立はしやすい」ともあって、まあそうなんだけど、身もフタもないな。コミュニケーション能力が必須、としてるところは個人的にポイント高い。

ちなみに、司書の「読んでみて」な本は、定番の『夜明けの図書館』だった。ここは『司書のお仕事』とかでもいいかな。

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『日本の給料職業図鑑』

ウェブサイト「給料BANK」を書籍化したもの。ちなみに、これもこないだ新版が出たけど、あたしが読んだのはこの版のもの。各職業の給料がわかる、というのが売りだが、目を引くのは、各職業をRPG風のキャラクターで紹介したイラスト。その職業のイメージが良くも悪くも集約されている感じ。

「図書館司書」の項あり。タイトルどおり給与が大写しになってるのもこの本の特徴で、司書の場合、平均給与22万とあって、地方公務員扱い。嘱託職員だと月給換算で14-16万と安い(地方だとさらに安い)、とある。資料の整理・管理、利用者対応、レファレンスやイベント・連携の企画立案など、司書の仕事内容についてはおおよそカバー。閉館時間があるので残業が少なく、女性でも働きやすい、とあるけど、ほんとかしらん。ちなみに、サイトの方は掲示板がついていて、対人スキルがないとキツイ上に、特に非正規は待遇悪いことがひしひし伝わるものになっている。

なお、司書のイメージイラストは、女性、三つ編み、マジックユーザーというか魔女っ娘っぽい感じ。バックの分類番号?が微妙に間違ってる気がするのはご愛敬。(ちなみに、件のイラストはここでも見られます。

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『5分でわかる10年後の自分 2030年のハローワーク

ちょっと変わり種。中学生たちが、AIとバーチャルリアリティで10年後の仕事を体験してみる、という内容。小説仕立てで、技術周りの設定や描写がとてもしっかりしている、と思ったら、著者は、歴とした作家さんだった。

物語としても読み応えがある上、職業紹介本としても、近未来予測としても良くできていると思う。単に、未来の職業をキラキラかつふんわりと紹介するのではなく、アート系なら海外で働く工業デザインの道もあるから英語を学ぶべき、など、進路を踏まえた、地に足のついた中身になっている。こういう進路指導があったら、あたしも随分違った人生だったかもなあ。(遠い目)

巻末に、タイプ別の「AI時代のお仕事診断」がついていて、司書は、漫画とアニメ好きな普通の中学生(文系)がなり得る職業としてチラッと出てくるだけ。出てくるだけましか。

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全然網羅性がないけど、少なくとも、中高生向けの本のいくつかでは、将来の職業として司書が挙げられていることは確か。(AI時代を謳った本ですらも、一応出ては来る。) とはいえ、10年20年先にも、司書が、将来なりたい職業として認知されているか、というか、職業として残っているかどうか、は、なかなか予断を許さない感じ。特に、労働条件の悪さは隠しようもない。

せめて、仕事の内容だけでも、もっとステキな職業として認知されるよう、あたしも頑張ろうと少しだけ思った今日コノゴロ。

それにしても、「図書館司書」ってなってる本が多いんだけど、なんでかなあ、と思ったら、日本標準職業分類でも「図書館司書」だった。文科省(の資格名)は司書なんだけどなあ。博物館学芸員とか言わないんだけど、なんで司書だけそうなのかしら。

コロナウィルス後の図書館(なんて大きなタイトルしか思いつかなかった雑記)

入館制限、消毒液やマスクの調達、果ては臨時閉館にリモートワークと、目まぐるしく変わる状況についていくのが精一杯で、ほんの二月前に何を考えてたか、ちっとも思い出せない始末。怖い。最近は、少し収まりつつあるのかなと思うけれど、秋冬にはまた同じような事態に陥る恐れは大きいのだろう。

しかし、ひとたびなにか起こると、ここまで感染防止・外出自粛が言われるということになると、対面でのモノを介したサービスや、物理的に人を集めることに、(良くも悪くも)腐心してきた近年の図書館は、大きな転機を迎えてるのかもしれない、と思う。ショック・ドクトリンでもないけれど、これを奇貨として、変えられるところは変えていけるといいなと思う。

先日、日本図書館協会は、図書館が読み聞かせの配信をしたり、複写物をメールやファクスで送ることを時限的に可能とするとするよう、要望書を関係団体に提出した。一方、日本出版社協議会は、「この緊急時にあっては、緊急措置としての国立国会図書館のデジタル化資料の公開について可能な限り協力したい」との声明を出している。

日図協はともかく、権利者側である出版協がここまで譲歩を表明するとは、正直、驚いた。NDLデジコレの図書館館送信資料が一時的でもウェブから使えるようになったら、世間的にもかなりのインパクトがありそう。

コロナウィルスの猛威もいつかは収まる(と思いたい)。ただ、完全に収まるまで、断続的に蔓延と収束を繰り返すだろうし、原因こそ違え、同じような事態は今後も起こるだろう。ならば、その時々に応じた臨時措置が柔軟にできることも大事だけど、特別な対応が必要ないように、日頃から整えることも大事だと思う。

各図書館が、自館資料を少しずつデジタル化したり、電子書籍サービスの導入を検討したり、地域の著作権者の没年を調べてNDLに情報提供したりと、できることは色々あるはず。出せるものはどんどんデジタル化して出してゆく。閉館やリモートワークの期間は、そのための準備作業・調査にあてたい。

と思いつつ、エビデンスなきまま感染対策に頭を痛める今日コノゴロ。正直、消毒機はいいのでマスクと手袋とエチルアルコールください……。

 

 

NDLサーチ検索結果のRSSを使って、NDLデジコレの地域資料リストを作る方法メモ(Googleスプレッドシート編)

国立国会図書館デジタルコレクション(以下、デジコレ)に含まれる地域資料のリストを作るときの元データを、国立国会図書館サーチ(以下、サーチ)の検索結果RSSGoogleスプレッドシートで作る方法のメモです。誰得です。

はじめに

地域資料のデジタル化は、どこの公立図書館でも喫緊の課題ではある(はずな)んだけど、マンパワーも資金もないのでなかなか進まないのが現状。

ところで、デジコレには、かなりの量の地域資料が収録されているので、これを使わない手はない。たとえば、デジコレに収録されてる自分とこに関係する地域資料のリスト、みたいなものをウェブサイトに公開するといいのでは、と、ここまでは(たぶん)みんな考える。

それを実現したのが、福岡県立図書館さんの「国立国会図書館デジタルコレクションに含まれる福岡県内で出版された図書」。おお、すごい。これ作るの結構タイヘンだったのでは。おまけに、同ページで公開されてるExcelシートの凡例に作り方のあらましが書いてあってありがたい。

で、今回はこれを参考に、Googleスプレッドシートで簡易バージョン(劣化コピーともいう)を作る方法について、メモとして残しておく。

なお、当方、あんましこの手の知識はない(見よう見まねな)ので、もっと良いやり方があれば教えてください。(API叩いて…とかPythonスクレイピング&整形して…とかのツッコミはナシでお願いしますあたしにゃ無理です。)

要は、サーチの検索結果RSSを、Googleスプレッドシートの関数の一つ、「IMPORTFEED」関数*1で取得して、ちょちょい(でもないけど)と整形して、ブックリストを作るための元データを作ります。この方法の長所・短所は以下のとおり。

長所(少ないな)
  • Office(Excel)なくてもできる。
短所(多いな)
  • Googleスプレッドシートが使える環境でないとできない。
  • 網羅性があるかと言われると辛い(特定の書誌事項から検索して出力させてるので、書誌に検索キー(分類記号など)が入力されてなかったりすると漏れる。)
  • 書誌事項が簡易(例えば、責任表示は一つだけ、とか。版とか、出版月とかは取得できないっぽい。)
  • 取得できる書誌URLがサーチのものなので、デジコレで本文を見るには、サーチの書誌画面から飛ばないといけない。(痛い。)
  • 著作権処理情報が取得できない。「インターネット公開資料」かどうか、わからない。(痛い。)でもまあ、ほとんどの資料は、参加館内でしか利用できない「図書館間送信」扱いだったり。

以下、例として、福岡県内の地誌関係書リストを作ってみる。

1.どういうリストを作るか考える

サーチの検索結果からリストを作るので、まず、どういうリストを作るか、そのリストはどうやったらサーチで出力(検索)可能か、を最初に考える。基礎自治体で作るときは、「出版地」に自治体名を入力すればいい。郡や県域レベルだと、自治体数も多いし、合併とかで名称も変わってるので結構大変。むしろ、「分類記号」に、対象地域のNDLCかNDCを入力したほうが早い。(割り切り)

なお、サーチはOR検索に対応していないので、広域のリストを作ろうと思ったら、自治体名や、NDLCやNDCの細目ごとにRSSを取得する必要がある。ちなみに、福岡県のNDLCは、GC263(福岡県〔 筑前筑後豊前〕)、GC265(北九州市)、GC267(その他の各地)で、NDCは219.1。

2.RSSを取得

サーチの詳細検索で必要な事項を入力して、作りたいリストのための検索結果を表示させる。NDCL「福岡県」の資料だと、「分類番号」に「GC263」を入力して、「データベース」のチェックを「国立国会図書館デジタルコレクション」だけにして検索。

NDLサーチの検索結果画面

なお、検索結果数があまりにも多いと、あとあとの作業がめんどいので、適宜、結果数を調整する(出版年で区切るとか)。

結果が適当ならば、画面右にある「検索結果を出力」にある「検索結果のRSS」をクリックして、表示されたページのURLをコピーしておく。また、検索結果件数をメモっておく。(これ大事)

RSS検索結果のリンクを示した画像

検索結果RSSのURLを示した画面

3.GoogleスプレッドーシートでRSSを取得

Googleスプレッドシートを立ち上げて、最初のセルに「importfeed」関数を入力。引数(関数のあとにカッコで入れるもの)には、「"さっきコピったRSSのURL","items"",true,さっきメモった検索結果件数」を記述。RSSのURLとitemsは、""で囲む。

Googleスプレッドシートに「importfeed」関数を入力した画面

itemsは、RSS検索結果から、何を引っ張ってくるかを指していて、今回は、検索結果資料のタイトル、著者、URLなどの書誌事項がそれに当たる。今回は全部引っ張ってきてます。省略可。"true"は、見出し行(TitleとかAutherとか)を含めるかどうか。見出しあったほうがわかりやすいのでつけてます。

成功すれば、読み込み後、サーチ検索結果を「Title」「Auther」「URL」「Date Created」「Summary」の各列に割り振ったシートができる。

GoogleスプレッドシートでRSSを取得した画面

4.Summaryのセルを整形する

できたシートの各列は、それぞれ、「Title」が書名(タイトル)、「Auther」が(第1)責任表示、「URL」がサーチの書誌ページURL、「Date Created」が出版年で、それぞれそのまま使える。
問題は「Summary」で、巻次、出版者、出版年と、その他(タイトル、タイトル読み、NDC)が一つのセルにごちゃっと入っている。めんどいので、巻次、出版者、出版年だけ取り出すことにする。

なお、関数で編集・作成したセルを更に関数でいじったりするとうまく行かなかったりエラーになったりするので、整形の前に、すべてのセルを文字列にしておく。全選択して、値のみ貼り付け。

同じくGoogleスプレッドシートのSplit関数*2を使って、「Summary」のセルを"-"で分割する。「巻次と出版者、出版年」が入力されたセルと、その他(タイトルほか)のセルができる。
なお、Split関数は、指定した文字で文字列を分割して、別のセルに書き出すもので、ここでは、「Summary」内のその他(タイトル、タイトル読み、NDC)の前に付いている"−"で分割している。

「SPLIT」関数でセルを分割している画面

分割された「巻次と出版者、出版年」のセルには、改行や空白文字があるので、列全体を選択して、メニューの「データ」から、「空白文字を削除」を選択。

分割したセルの空白を消している画面

5.リスト作成のための元データ完成

ここまでで、「Title」「Auther」「URL」「Date Created」「巻次と出版者、出版年」が入力された表の出来上がり。

「巻次と出版者、出版年」のセルを更に","で分割することもできる。でも、巻次が入力されいてないものが(当然ながら)あるので、巻次がある行とない行とで、列がずれちゃうのが困りもの。めんどくさいので(多いな)、ここではそのまま。巻次が一番最後に入力されてたらなんとかなるんだけど。それと、「Date Created」は出版年なので重複してるから削除。

あとは、この表を使って、HTMLを書くなり、WordやExcelで整形して紙で印刷するなりすればOK。件数が少なければ、サーチの書誌URLを手入力でデジコレに差し替えるとなお良い感じ。

おわりに

こんなめんどくさいことしなくっても、NDLから「国立国会図書館デジタルコレクション書誌情報」のデータセットが公開されてるので、これを加工すればいいじゃん、て話なんけど、残念ながら、出版地が入ってない。上記で作成した表と、データセットを突合すれば、もっといいものができるのかもしれない。

以上、参考まで。

2020年の気になる図書館システム関係覚書

2019年中に気になっていて、個人的に注目している図書館システム関係(公共図書館中心)に関する覚書です。独断と偏見でとりとめなく書いています。

システム担当から外れて幾星霜、でも去年は久しぶりに図書館総合展にも行って、面白そうなことも見聞きしたので、忘れないうちに。ちなみに昨年分はこちら

図書館業務システム関係

業務も扱う品物も、大きく変わっていないのだから、システム自体もそれほど変わるわけもないのだけれど、それでも少しづつ変化はしている模様。

読書履歴(貸出履歴)をシステム上で利用者自身が管理できる仕組みを採用する館が現れている。県立だと福井県立図書館さんとか*1。需要もあるだろうし(あたしも年取って、前に読んだ本のタイトルが思い出せないこともしばしば)、自己情報のコントロール権みたいなものが論ぜられる昨今、当然の流れかと思う。

それにしても、10年くらい前、「図書館の貸出履歴の利用(主にレコメンド)は是か非か、そもそも可能か」が一部で論じられたたことがあったけれど、もう隔世の感がある。少なくとも学問の世界では、図書館のデータ(業務記録)を有効利用しようとする試みが営々と行われている*2 。一方で、図書館自身が、その業務データを自分で分析・活用しようとするところも現れたようで、原田隆史氏の小論*3 の最後で紹介されている。どこの図書館なんだろう。しかし、図書館員も(と言うか現代人の多くが)統計とデータ分析の基礎くらいは身につけないといけない時代の模様。

システムとは直接関係ないけれど、2019年の図書館総合展でシステムベンダーさんのブースを回ったときに特に印象に残ったのは、京セラさんのオーディオブック配信サービスの導入*4。 2020年2月から試験提供とのこと。コンテンツ次第だけど、図書館にもオーディオブックの波が来るかも。

なお、長野県立図書館さんが何やら面白そうな仕様(連想検索とか)でシステム調達してる*5んだけど、気になるなあ。

ちなみに、昨年紹介した砺波市立図書館さんの取り寄せ依頼できる広域横断検索「となみっけ」は、ツイートによると業績アップに貢献している模様でなにより。

ウェブサービスデジタルアーカイブ関係

ジャパンサーチ(BETA)が稼働を開始したことで、今までデジタルアーカイブも含めたポータル的存在であったNDLサーチは「図書館等が扱う情報資源」を扱う形で住み分けしていく*6とのこと。「情報資源」とあるように、図書館のデジタルコンテンツ(のメタデータ)も、一旦NDLサーチで取りまとめてから、ジャパンサーチに送られる仕組みになる模様。図書館がデジタルアーカイブを作るときには、当然、連携が前提だろうから、これからは、すでにNDLサーチと連携済みのプラットフォームを使うのがますます主流になると思われる。

なお、将来的には、都道府県立図書館がOAI-PMH等による総合目録システムを構築することで、域内の市町村立図書館の書誌・所蔵データを吸い上げ、最終的にNDLサーチから日本全国の公立図書館の所蔵検索が可能になるのかもしれない。(三重県立図書館さんは、OAI-PMHによる横断検索を一部実装済みとのこと*7)ただし、まだまだ先の話。システム間の連携調整はそれなりに大変だし、正直、カーリルローカルを使えば、全国の市町村立図書館の蔵書をかなり早く検索することができるから、どこまで需要があるのかしらん。

あと、2019年の図書館総合展で(個人的に)一番尖ってたのは、このフォーラム*8だったように思う。ここで言われていた、公開されてるはずのデジタルアーカイブのコンテンツがダウンロードできない、できても解像度が低い、そもそもデジタルになってないものが多すぎる、図書館側がデジタルを使いこなす利用者に対応できていない、などなどのご指摘はいちいちごもっともで、ぐうの音も出ない。うう、がんばりますので長い目で見ていただけると……。コスト、著作権、コンテンツの管理(「お宝」を勝手に「使われる」ことへの警戒感)など、問題は山積してるけれど、それが少しずつでも表面化して、共有されて、解決していけるような流れが来ると良いなと思います。

まあ、本格的なデジタルアーカイブが、一般的な公共図書館にはまだまだハードル高いのは事実。昔々、上田市情報ライブラリーさんが地域資料と思われる注連飾りの作り方の小冊子をスキャンして公開してたことがあった(現在は消失*9)。たぶん、コスト的には殆どかかってなかったはず。今必要なのは、こういう地域密着な資料のささやかなデジタル公開なんじゃないかなと思ったり。

あと、これも総合展で見た「みんなで翻刻」のくずし字文字認識AIの精度にはびっくり。これ、いわゆる地域新聞の翻刻・索引化にも応用できないかなあ。地域新聞のデジタル画像を持ってる(そして死蔵してる)図書館は少なくなさそうだし、AIとクラウドソーシングで地域の新聞を翻刻する、「みんなで地域新聞翻刻」とかできるといいなあ。

電子書籍サービス関係

電流協さんによると、2019年10月1日現在、電子書籍サービスを導入している図書館は、89自治体、86館とのこと。(ちなみに昨年は81自治体、78館だった。)まあ、伸び方も例年どおり。

年末に、電子書籍サービスの大手OverDriveを、親会社である楽天が売却*10、というニュースが飛び込んできた。必ずしも日本での成績が振るわないから、というわけでもないみたい*11。日本への影響はあるのかないないのか、よくわからないところ。

ちなみに、年末に田舎に帰省して、餅つきしてたとき(このくらいの田舎だと思ってください)に、手伝いに来てた近所のおばちゃんが、「最近、(紙の)本をとんと読まなくなって。代わりに「dマガジン」ばっかり読みよる。」って言ってた。世の中、着実に変わってる模様。

おわりに

一年立つのは早いなあ。去年これしか書いてないので今年はなんとかしたい……です。

*1:2020年1月8日追記、網羅的に調べてるわけじゃないので漏れ多数。例えば、岐阜県図書館でも。カレントアウェアネス・ポータル 2020年12月19日 岐阜県図書館、ウェブサイトをリニューアル:スマートフォンでの貸出が可能に

*2:例えば、岸田和明「図書館利用データの解析とその活用」(「情報の科学と技術」69(3) p106-110 2019)を参照。

*3:原田隆史「《座標》図書館の評価」(『図書館界』71巻2号 2019.6)

*4:カレントアウェアネスポータル 2019年11月12日:京セラコミュニケーションシステム株式会社、公共図書館システム「ELCIELO」と株式会社オトバンクの「audiobook.jp」を連携させたオーディオブック配信サービスの提供を開始へ

*5:WARP 2019年11月4日保存:県立長野図書館業務コンピュータシステム及び機器一式に関する公告

*6:川瀬直人「NDLサーチのこれまでと今後」(PDF直リンク)第21回図書館総合展フォーラム「国立国会図書館サーチのこれから:書籍等分野・図書館領域のつなぎ役として」 2019年11月)

*7:垣内志織「NDLサーチ連携候補機関からの事例報告;三重県総合目録の現状と今後の展望」(PDF直リンク)( 第21回図書館総合展フォーラム「国立国会図書館サーチのこれから:書籍等分野・図書館領域のつなぎ役として」 2019年11月)

*8:第21回図書館総合展フォーラム「地域資料とデジタルアーカイブのミッシングリンク-図書館の底力への期待-」(2019年11月)」

*9:InternetArchive:「インターネット版「注連飾りの作り方」」

*10:カレントアウェアネスポータル 2019年12月25日:楽天株式会社、同社傘下で電子書籍サービスを手掛けるOverDrive Holdingsの全株式を売却へ

*11:

HON.jp:大原ケイのアメリカ出版業界解説「楽天からオーバードライブを買ったKKRのリチャード・サーノフ氏は何者でどういう意図なのか?」

2019年の気になる図書館システム関係覚書

2018年中に気になっていて、これからも個人的に注目していきたい図書館業務システム(主に公共)、ウェブサイト及びサービス、デジタル資料などについて、ざっとまとめる。システム担当から外れてはや2年なので、最新情報を追っかけてるわけではまったくないのだが、こういうのをものしてると色々教えていただけることも多いので。

なお、主に公共図書館を対象とした、2019年1月27日現在のお話です。ちなみに昨年のはこちら

図書館業務システム関係

書影付きのウェブOPACが珍しくなくなってきた。書影については、多くがGoogleブックス由来と思われる。OpenBD由来は野田市立図書館さんくらいか。2018年6月から、国立国会図書館サーチのAPIでも書影が扱えるようになったのだが、新刊中心のせいか、利用している館はまだない模様。

(2019年1月28日追記:BOOKデータASPサービス(日外アソシエーツ)の採用館が40館以上あるとのこと。コメントありがとうございます。)

書影があると、資料の中身や鮮度が直感的に伝わるので、検索の利便性は大きく向上すると思う。とはいえ、書影表示はたいていオプションなので、どのくらい効果があるのかのエビデンスがないと、なかなか追加予算も取りにくい。どこかが調べてくれないかしらん。

カーリルさんとこは相変わらず元気。Unitrad API採用の横断検索サイトは20を超えた模様。(カーリルさんから貰ったパンフより) 複数の自治体による広域連携の動きがあるけれど、例えば、県境を越えた生活圏を作ってるようなところで、Unitrad APIを使った横断検索サイト作ったりすると面白いかも。

また、同じくUnitrad APIを使った砺波市立図書館のOPAC「となみっけ」は、なかなか衝撃的。館内もウェブも同じシンプルな画面で、自館だけでなく、県内図書館の蔵書、果ては近県分の所蔵まで一度に検索してしまう。いわば横断検索をメインに据えた形。おまけに、自館になかった資料には、所蔵館が記載された予約カードをPDFで出力するボタンが出る。相互貸借は、いろいろ調整が必要なサービス(借受先の分散とか、購入リクエストへの切り替えとか)だけど、なにより、よその図書館から借りられることをはっきり「見える化」したのは英断だと思う。導入の経緯と運用の状況を聞いてみたいところ。

あと、日立さんは図書館システム(の販売)からは撤退とのこと。寡占がさらに進むなあ。図書館システムのデータ移行問題検討会の報告書も出たけど、データの共通化は、寡占化とクラウド化とで自ずから進んでいくのかしらん。

ウェブサービス関係

著作権法の改正により、2019年1月1日から「電子計算機による情報処理及びその結果の提供に付随する軽微利用等(第47条の5関係)」の規定が改められた。要はGoogleブックスにおけるスニペット表示のたぐいが条件を満たせば無許諾で可能となった。Googleブックスによる書籍の全文検索は、もはやレファレンス業務に必須(当方調べ)。1月1日から強化されるかもと淡い期待をしたけども、特に変わった風もないのでがっかり。今後に期待。

国立国会図書館オンラインがスタートして一年が経過した。当初はちょっと重いかなと思ったのだけれど、今は特に違和感もなく使えている。リサーチ・ナビの目次データベースも検索対象になってるのはありがたいのだけど、全部ではない、という話も聞くので、調べものには結局リサナビも手放せない。

国立国会図書館デジタルコレクションもマイナーチェンジして、目次から本文のコマへのリンク機能やらが追加されて便利になった。2014年に図書館向けデジタル化資料送信サービスが始まったときは、膨大な資料(でも古いのばっかり)を前にして戸惑いのほうが強かったけれど、本家でも「明治から昭和前期に刊行された写真集」のような、テーマで資料を簡単に探せるページができてる一方、福岡県立図書館さんの「国立国会図書館デジタルコレクションに含まれる福岡県内で出版された図書」のように、外部からデジコレの資料を使いやすく再編集することも行われるようになってうれしいかぎり。なお、国会図書館さんでは今も地道な著作権者の調査が続けられており、著作権者情報の公開調査なんてのも行われている。例えば、都道府県立図書館の郷土人物情報データベースを使ったら、案外簡単に著作者の没年が見つかることもあるので、ぜひご協力を。

そしてもうすぐジャパンサーチ(仮称)が試験公開される。分野や館種を超えた横断検索で、どんなものが見つけられるようになるのか、楽しみ。個人的にはオープン化(メタデータ含む)という概念が、これを機にMLA界隈にさらに定着するといいなと思う。

デジタルアーカイブ関係

デジタルアーカイブのオープン化が少しづつ進んできた。ARGの岡本さんの調査によると、2018年9月時点で、都道府県立図書館のデジタルアーカイブで、パブリックドメインまたはクリエイティブコモンズを採用している図書館は4館とのことで、今後も増えていくと思う。
ただ、クリエイティブ・コモンズ適用すれば全てはOK、という単純な話でもない。ウェブ上にアップロードした古典籍・古文書類(著作権消滅済み)には、所有者の使用権は働かないと思われるので、利用に何らかの条件を付すこと自体が法的にはナンセンス。とはいえ、お金をかけて電子化して公開して維持管理するコストや責任は当然発生するわけで、せめて、使用の連絡とか所有元の表示くらいはさせてほしい、というのもごもっとも。提供元にもメリットのある利用条件とその表示のさせ方については、永崎研宣さんの「オープンライセンス表示に一工夫を」をご参照ください。検討が進むといいな。

電子書籍関係

電流協さんによると、2018年10月現在の公共図書館での導入館は78館(自治体数では81)。2017年の報告書では65館だったので、毎年10館強のペースで増えてることになる。自治体数のほうが多いのは、兵庫県の4市町が合同で運営している「播磨科学公園都市圏域定住自立圏電子図書館」てのがあるため。こういう、生活圏で一括契約というのが今後増えるかも。

 2019年4月からは、学校図書館向けに定額制の電子書籍サービスがはじまるというし、そろそろ公共図書館にも本格的に導入が進むかも……、まあ、数年はないか。むしろ、書庫問題に悩む都道府県立図書館が、紙の資料費減らして電子書籍サービス導入、なんてのが意外と現実味があるかも。

おわりに

先日、国会図書館の人のお話を聞く機会があったのだけど、デジタル化関係とかで、自前のツールをPythonで作ったりするとのこと。当方、BASICで挫折してから幾星霜、な人だけど、今年は何か学べるといいなあ。