BEAYS(新装版)

本と図書館のことについて、つらつら書いてゆくblogです。

2023年の気になる図書館システム関係覚書

2022年中に気になっていて、今後、個人的に注目している図書館システム関係(公共図書館中心)に関する覚書です。独断と偏見でとりとめなく書いています。(ここまでテンプレ) なんかもう2月になってしまったけど気にしない。
なお、昨年の覚書はこちら。

図書館システム関係

2022年で一番衝撃的だったのは、サイバー攻撃でシステムダウンした那覇市立図書館の事例*1ランサムウェアによるものとされ、10月中旬の発生からから4ヶ月近く経った2月中旬現在、予約は近日稼働予定とのことだが、書誌データなどはまだ完全には復旧していない模様*2。書誌情報はともかく、利用者情報とか予約情報にアクセスできなくなるとか悪夢でしかない。関係者の方々の苦労が偲ばれる。最近のランサムウェアは、データの暗号化だけでなく窃取も行うらしいので、今後は下手したら個人情報流出案件になる場合もあるかも。くわばらくわばら。今回の事例、収まったらセキュリティ的に問題ない範囲で詳細と対策を公開してほしい。

また、マイナンバーカードへ図書館利用カードの機能をもたせる、という取組も、2022年中はそれほど大きな動きはなかったけど、今年はどうか。ポイント効果で曲がりなりにもカードの普及率は高まった。年末に発表された「デジタル田園都市国家構想総合戦略」(PDF直リンク)なるものによると、今後、マイナンバーカードの「市民カード」化のための一機能として、浸透させていく(上記資料19枚目)とのこと。どこまで本気なのか。とはいえ、貸出履歴と結びつくとの誤解によるアレルギー反応も強いようだし、システム的にもこなれてない(マイキープラットフォームかましたり、ベンダーロックだったり。最近あまり注目してないのだけど、この一年進歩してない?)感じで、どうなることやら。

曲がりなりにもデジタル庁なんてものができて、公の世界にもDXだのUXだのといった新語が侵入し、DXとはなんぞや、みたいな15分くらいの研修動画を見せられたり。少なくとも、図書館利用カードの代わりに某カードが使えたり、紙の本を借りる代わりに電子書籍を利用できたりするのは、代替であって変革じゃないし、顧客中心でもないから、DXでもUXでもないよね、ということはわかった。

全国公共図書館研究集会のサービス部門・総合経営部門のテーマもタイムリーなことに「図書館におけるDXの可能性」。原田先生のお話はとても面白かったのだけど、さて、どこから手を付けたらよいやら。あんまり他人のせいにもできないけれど、「貸出記録を残さない」としたことで、良くも悪くもデータを扱うことをやめてしまった業界、なかなか前途は厳しそう。

電子図書館関係

電流協さんの「電子図書館(電子書籍サービス)実施図書館(2023年1月1日)」*3によると、実施自治体は461自治体・369館。2022年1月1日現在*4では272自治体・265館だったので、順調に伸びている。ざっくり3000館ある公立図書館数の1割超える程度にまでなった。都道府県立が導入してる場合、名目上、その都道府県民は電子図書館を利用できるはずなので、人口カバー率でも結構いい値行くのでは。

コロナの副産物として定着した感のある電子図書館だけど、紙との両立(あるいは穏やかな移行)も大きな課題。主にコスト面で。MARC買うのやめて費用を捻出した館もあるとも聞いている。その意味でも、県立と市町村立が共同で運営している、長野県の“デジとしょ信州”はすごいなあ。もともとデジタルアーカイブでも広域で連携できてた*5とこなので、さもありなん、という感じだけど、関係者各位、調整ホント大変だったのではないかと思う。図書館大会の発表聞いとけばよかった。

電子図書館サービス向けコンテンツもそこそこ増えてきてるようだけど、まだまだ少ない。それに、少ない中に面白げな本はあるのだけど、ログインしないとどんな本があるのかわからなかったり、ログインしても書誌情報が貧弱だったりして(読みも件名も入力されてないとかね、某システムさん)、読みたいと思う本がなかなか探せないのが現状かな。(個人の感想です。)初期のアマゾンは、レコメンドとか、読みたい本を探す仕組みづくりに相当力入れてたように思うけど、図書館は例によってそういう動き鈍いなあ。最低でも、WEBOPACと電子図書館システムがちゃんと連携して、わざわざログインしなくても電子図書館のコンテンツが探せることは必須だなと個人的には思う。

コンテンツといえば、児童図書館研究会さんが、「電子図書館調査報告(速報版)」で全国の電子図書館サービスにおける児童書のコンテンツ数を調べられていて*6、綿密な調査に頭が下がる。いくつかの館では児童書数が「不明」になってるけど、思うに、調査は各館のサイトなどに記載されてる数値を採ってると思われ、要は設置者が数を公開してないということらしい。まあ、児童書に当たるものがほとんどない電子図書館システムもあるけど、だったらゼロって自前でちゃんと表示しとけばいいのに。

デジタルアーカイブ関係

国立国会図書館の快進撃が止まらない感じ。昨年5月にはNDLデジコレの個人送信が開始され*7、12月には大幅リニューアルでついに全文検索が実装*8。開始時点で247万冊分の資料の中身がまるまるキーワード検索できる、という、夢のようなというか、恐ろしいというか、とにかくすごいことになった。

固有名詞を入力すればガンガンヒットして、それが公開 or 図書館・個人送信資料になってればその場で確認でき(先日から印刷もできるようになったし)、公開されてなければシームレスに複写を依頼できる。特定の資料を指定しての全文検索もできて、GoogleBook検索の苦労は何だったのか状態。(収録資料が違うので未だに併用必須だけど) 全国民はNDLの個人登録をすべき。でもそうなったら、ある意味、「レファレンス・サービス終了のお知らせ」かも。もちろん対象が広がった分ノイズも格段に増えてしまったし、認識ミスもあるだろうから過信は禁物だけど。あと、今のところOCRかかってるのは図書と雑誌で、プランゲ文庫とか特殊なコレクションにはOCRかかってないみたいだから御注意を。また、古典籍の全文検索“次世代デジタルライブラリー”じゃないとできない。そのうち、本チャンにも実装されるんだろうけど。

おまけに、この恐ろしいOCRプログラムのソースコードは公開されてる*9*10んだそう。今からのデジタルアーカイブOCR全文検索が標準になっちゃうかも。どこかのベンダーさんが採用してくれないかなあ。つか自前でもできるのかも。今後は、とりあえずデジタル化してNDLデジコレに入れてもらう*11、自力のあるとこは自分とこのデジタルアーカイブOCRかけて全文検索、なんてのが一般的になるのかも(なってほしい)なあ。

その他あれこれ

ついにというか、いよいよというか、「各図書館等による図書館資料のメール送信等公衆送信」(一般的には何ていうんだろう、図書館資料公衆送信サービス?)が2023年6月1日開始の見込み*12。あと数ヶ月先ですけど、まだガイドラインもできてないし(3月末公開?)、補償金についても公開されてないし、SARLIBさんのサイトもないし。ほんとに始まるのかしらん(棒)。運用を考えるだけでも、対象資料の著作権の有無をどうやって確認するのかとか、補償金支払いのスキームとか、問題山積で前途多難な感じ。ただ、これが始まったら、曲りなりにも対応する図書館では、スキャナ(複合機レベルかも知れないけど)が置かれて、スキャニングのノウハウが溜まるはず。資料の電子化への小さくて大きな一歩かも。

あと、対話型AIのChatGPTにはほんと驚かされた。内容的には、正確性に欠ける、というか、実になめらかにデタラメを返してくる(あたしが試した例だと、井上馨は漫画家なのだそう。)ので失笑するしかないのだけど、Q&Aがちゃんと成り立ってるように見える、というのはすごい。NDLデジコレとかのデータをちょいとぶっこんだら、レファレンスできちゃうんじゃないの。そもそもそんなに「正しさ」が求められてるわけでもないし(と言ってみたり)。「レファレンスサービス終了のお知らせ(2回め)」。と思ったら同じこと*13を考える人がやっぱりいた。もう出典を明示するやつ*14とかもあるらしいし、そろそろ転職かしらん。まあ、正直、「AIが答えた回答の出典を探してください」なんて質問が来るようになるかも、と考えるとゾッとするなあ。

終わりに

なんかあたしも天命を知る年になったらしいんですけど、一向に降りてこないなあ。

それはそれとして、先日、高校生のプログラミングコンテストの審査動画見てたら、学校図書館の蔵書管理システムがアレなんで自前で予約サービス作った、みたいなのが出てて、高校生が普通にクラウド上でJavascript書いて、蔵書の書誌データにはISBNなかったからNDLから引っ張ってきて7割位埋まったからまあ良しとして、なんてプレゼンしてて、ああ、老兵はただ去るのみだなあと思った*15次第。若人、頑張れ。(無責任)

まあ、AIやならにやら、いつになく大きな変わり目になりそうな、面白い年になりそうな。幸せかどうかは別としても。

 

*1:カレントアウェアネス・ポータル:那覇市立図書館にサイバー攻撃:全館において貸出・返却や予約等のシステムが使用できない状態

*2:カレントアウェアネス:那覇市立図書館、予約サービスを再開予定

*3:このページは更新されちゃうので数値変わる可能性大。

*4:WaybacMachineによる2022年3月16日のアーカイブ:電子図書館(電子書籍貸出サービス)実施図書館(2022年01月01日)

*5:カレントアウェアネス・ポータル:長野県の歴史・文化・自然等のデジタルアーカイブ「信州デジくら」がオープン

*6:児童図書館研究会:「電子図書館調査報告(速報版)」公開のお知らせ

*7:国立国会図書館:個人向けデジタル化資料送信サービス

*8:国立国会図書館:「国立国会図書館デジタルコレクション」をリニューアルしました(PDF直リンク)

*9:カレントアウェアネス:国立国会図書館、OCR処理プログラムと学習用データセットを公開

*10:カレントアウェアネス:国立国会図書館、「次世代デジタルライブラリー」への古典籍資料のテキストデータ投入を完了:「NDL古典籍OCR」のソースコード等を公開

*11:国立国会図書館:国立国会図書館未収かつ入手困難資料のデータ収集事業へのご協力のお願い

*12:e-GOV:パブリックコメント:「著作権法施行令の一部を改正する政令案」及び「著作権法施行規則の一部を改正する省令案」に関する意見募集の結果について:「著作権法施行令の一部を改正する政令(案)」及び「著作権法施行規則の一部を改正する省令(案)」の概要について(PDF)末尾

*13:Ascii.jp:遠藤諭のプログラミング+日記 第152回:国会図書館デジタルコレクションのリニュアルとChatGPT

*14:Perplexity.aiってやつらしい。まだ試してないです。

*15:でも、その高校生を褒めてた審査員の首長には、少なくとも学校図書館の環境を良くする責任があると思うんだけど。何生徒にタダでやらせてんだよ。

2022年の気になる図書館システム関係覚書

2021年中に気になっていて、今後、個人的に注目している図書館システム関係(公共図書館中心)に関する覚書です。独断と偏見でとりとめなく書いています。(ここまでテンプレ)失礼ながら敬称略です。
なお、昨年の覚書はこちら

図書館システム関係

クラウドのシステムが増えたなあという印象。コスト的にも仕方のないところだろうけど、ごくたま〜にダウンすると、広範囲に影響があるから怖い怖い。*1

そしてついに(さすがに)さようならIE。ウェブアプリ系のシステムはEdgeに移行してるものと思われる。ネックだった推奨ブラウザIEのデータベース(特に新聞)も対応*2してきて、一安心。

勤務館でも検討したのだけど、スマートフォンなどによる利用カード代替ができる館が出てきている。*3 ブラウザにログインしてバーコード表示するだけなので、技術的にもセキュリティ的にもそんなに難しいところはない(はず)。また、電子図書館だけ使えればいい、というお客さんなら、ひとまず物理的なカードは要らないという人も出てくるだろうし、今後、主流(というか、あって当たり前の機能)になるかも。

当たり前といえば、今年1月から東京都立図書館が始めたチャットボットサービスも、今後広がるかも。図書館に電話で問い合わせする人々はおそらく使わないだろうけど、潜在利用層は大きいのではないかと思う。ちょっとした質問がチャットですぐわかるのは、お客さんにとってありがたいこと。

自治体の電子申請もこれまた当たり前になってきて、図書館の利用登録なんかも電子申請できるところが現れている。*4 認証を伴わない仮登録レベルでは、ベンダーさんによっては図書館システムで対応できてるとこもあるとか。自治体の汎用電子申請システムを使う場合、そのシステムは、事業者の許認可申請に使うことも考えて多機能・高セキュリティ、しかし使い勝手悪いものもあると思われ、担当者の気苦労が察せられる今日コノゴロ。どことは言わないけれど。

利用登録を電子化するとき、一番問題になるのは本人認証だろう。証明書の画像を使うのが一般的だろうが、マイナンバーカードによる個人認証を活用した実証実験*5も行われている。すでに過去のものであるところの、マイナンバーカードを利用カードの代わりに使う仕組みと違い、利用登録を遠隔で行うときの認証に使うもので、貸出し自体は認証済みのアプリ単体でできるので、マイナンバーカードを持ち歩かなくてもいいらしい。まだ大学図書館での実証実験レベルだけど、近々公立にも導入されるかも。こういう個人認証の仕組みもあらあら知っとかないといけないなあ。

しかし、実際のところ、まだまだシステム連携など夢のまた夢。申請は電子でも、結局、中の人が証明書の画像見て図書館システムに入力して(場合によっては修正のやり取りして)、通知する、みたいなレベル。メルツェルの将棋差しかよ。DX!。でも、まずはここからスタート。2021年9月に鳴り物入りで業務開始したデジタル庁と、その下部組織である自治体のデジタル担当課が、アイドリングを終えて、そろそろ本腰でDX的なものが動き始めるのかしらん。

なお、お役所的にいちばん大変なのは、デジタルを活用したサービスや取り組みを「法令的に正しく」規程化することなのかも。「利用者が自身のスマートフォンタブレットで図書館サイトの利用者ページにログインして貸出用のバーコードを表示させる」みたいなのを法令用語で利用規程に書くのはけっこう大変ですよ、ホント。(遠い目)

電子書籍サービス

コロナを奇貨として、2020年くらいから順調に増え続ける図書館の電子書籍サービス。10月1日現在で比べると、2020年の143自治体139電子図書館から、2021年は258自治体251電子図書館*6へ増加。建前としては、都道府県立が導入してたら県域で使えるわけで、決して珍しくない存在になってきた。

普及期に入ったと思しい電子書籍サービスだけど、コンテンツの少なさはあいかわらずで、これはこつこつベンダーさんに働きかけるしかない。むしろ、今後の課題は、コンテンツのファインダビリティや広報かなと思う。契約や認証の関係で、サービスにログインしないと、どんな電子書籍があるのか、お客さんにはわかりにくい。OPACで検索できない館が多く、ましてや、横断検索では電子書籍サービスがあること自体わからない。コンテンツの少なさもあいまって、電子書籍がオラが図書館で使える、と夢膨らませ、ログインして、ちょっと検索して、読みたい本がなくてがっかり、な、お客さんが多いことは容易に推察される。意外と面白い本はあるのに。また、某MARC屋さんのものはともかく、それ以外の電子図書館システムの書誌データや、電子書籍サイトの検索窓は、あまり使い勝手良くない印象(主観)で、せっかくの電子書籍も、見つけられない、知られない、使われない、という状況が生まれているのではないかと思う。

そもそも、図書館にとっては借り物である電子書籍について、自館の蔵書管理上どう整理するか、その書誌情報や所蔵情報はどのように書くべきか、どのように検索させるべきかのノウハウは、多くの公立図書館は持ってない気がする。ディスカバリーの運用をしている大学図書館に学ぶべきかも。また、紙資料、デジタルアーカイブ電子書籍サービスと、公立図書館の扱う資料の提供基盤が副層化してきている。いまこそカーリルUnitradAPIの力技検索の出番かも。

著作権法関係

御存知のとおり、2021年の著作権法改正*7により、今年5月から国立国会図書館のデジタル化資料が個人送信されるようになる。当面ストリーミング(閲覧のみ、印刷不可)で、利用登録必要(インターネット利用登録者は利用不可、有効期間3年)と、制限はあるけど、莫大な資料が自宅で利用できるというのは大きい。図書館にとっても、メールレファレンスの回答時にデジコレのURLを付して、これ見てね、とお伝えすることがますます増える(おそらくデフォルトになる)のではないかと思う。

なお、2021年末に公表された「国立国会図書館のデジタル化資料の個人送信に関する合意文書」には、末尾に「大学図書館公共図書館等の各図書館等は、国民の情報アクセスを確保する観点から、国立国会図書館及び文化庁文部科学省からの依頼に応じて、国立国会図書館への積極的な絶版等資料の提供に努めることが望ましい。」とある。自分とこの図書館に眠ってる/腐ってる(NDLに所蔵のない)デジタル化資料や、保存に必要な数以上の複本があるなら、とっとと上納するのが吉。

そして、「図書館等による図書館資料のメール送信等」も実施に。これまた懸案だった、コピーは手渡しか郵送のみだったのが、メール添付もOKになるという、画期的な内容。2023年6月までに実施予定で、もはや待ったなしに。とはいえ、実施までのハードルは高く、いまだ全貌が見えないのはなんとも困った限り。実施できる図書館の要件、コピーできる資料の種類、補償金の額と支払い方法、不正な申込みや再コピー・ウェブ漏出を防止する方法の詳細など、現在調整中なことが多すぎ。間に合うの? 来年ですよ来年。まあ、2022年度に「読書活動の推進等に関する調査研究」の一つとして試行実施がある*8とのことで、そこで制度設計・実証実験されるのかしらん。

個人的には、補償金を「個別に算出して、図書館の設置者(公立だと教育委員会?)が払う」という仕組みをどうやって実施するのかが興味深い。あと、各図書館に於かれてはスキャニングしたときの複写手数料の算出根基だけでも、今のうちから考えておく必要があると思われますです。

なお、今回の改正では、著作物のコピーできる範囲の例外規定が変更されることになっている。従来は逐次刊行物のバックナンバーだけだった、「全て」複製できる著作物が「政令で定められるもの」となる。この変更には要注目。雑誌バックナンバーの記事は全部複製できて、図書の論文集に収録された論文は半分まで、という理不尽な規定が見直されるはずだが、逆に、逐次刊行物のバックナンバーに載ったものなら絵画だろうが楽譜だろうが全文複製可、というルールもひょっとすると使えなくなっちゃうかも。

終わりに

私事ながら、当方、今年は五十路になる予定。思えば遠くへ来たもんだ。新聞の縮刷版も虫眼鏡ないと読めなくなったし、書庫の階段登るのも息が切れる。若い人たちが効率よく仕事をこなしていて、頼もしくもうらやましくも。今年こそpythonくらい書けるようになりたいなあ。

ユーロトラックシミュレーター2と読書

ユーロ トラック シミュレーター2(Euro Truck Simulator2,ETS2)というゲームがある。タイトルどおり、大型トラックの運転手として、ヨーロッパの国々をまたいで荷を運ぶ、よく知られたPCゲーム。古いので3Dながら比較的低スペックでも動作し、何よりトラックの挙動や道路(ジャンクションとか)の作り込みが素晴らしいので、遅まきながらすっかりハマってしまった。

こちとら海外旅行経験1回(しかもアジア)のデスクワーカーで地理の成績は最低ランクだったのだけど、ETS2のおかげで、ヨーロッパの道路事情やらトラック野郎(死語)の生態やらに興味が湧いてきて、ちょっと関係する本を読んだりしたので参考(何の?)までにご紹介。

地図帳で地名確認

ゲーム内では、BtoBの物流を担うトラック運転手として、ヨーロッパの都市間を行ったり来たりすることになる。各都市の位置関係やルートはゲーム内のマップでいつでも確認できるし、ナビ(日本語音声付き)もあるので迷うことはないのだけど、車窓から見える山だの川だの湖だの説明がゲーム内にはなく、やっぱり手元に地図がほしい。(いや、GoogleMAP見ろよという話もあるけど、低スペなのでリソースは空けておきたいのです。)

ということで、紙の地図帳の出番。ひとまず『旅に出たくなる地図 世界』で、これはオーデル川?、これはきっとボーデン湖?、などと地名を確認して喜んでた(小並感)。なお、同書は観光情報重視なので、地名確認だけならシンプルかつ大きくて見やすい『ワイドアトラス世界地図帳』のほうがよいかも。ただ、どちらも一般的な地図帳なので、さすがに建造物までは載ってない。ヨーロッパの橋とか塔とかが載ってる本や地図帳を探したんだけどなかった。やっぱり洋書か土木系の専門書かしらん。先学の教えを請いたいところ。

トラックのメカニズムを学ぶ

さて、はじめは雇われドライバーで小金を稼いで、そのうち愛車を買うことになる。当然外車である。ベンツやボルボのようなメジャーなメーカーもあれば、スカニアやマン(ホントはエムアーエヌと読むそうな)のような商業車専門メーカーもある。例によって、シャシーやエンジンをとっかえたり、いろんなパーツを付けたりとカスタマイズもできる。引っ張るトレーラーも色々選べて、冷凍車、車両・重機運搬用、コンテナ運搬用などがあり、トレーラーに応じて運べるもの(つまりは稼げる運賃)が変わってくるので考えどころでもある。とはいえ、現実のトラックのメカニズムはもっと複雑で奥が深いようだ。

『ツウになる!トラックの教本』は、トラックに用いられる技術周りのことを、図や写真でわかりやすく紹介した本。情報は国内メインだけど、トラックの世界はグローバル化されていることもありゲームの理解にも十分役に立つ。また、よくある解説本のような通りいっぺんの説明ではなく、ちゃんと関係者に取材した現場の声が掲載されていて好感が持てる。ゲーム内ではアクセサリー扱いでしかないトレーラーの各種部品とかについても、メーカーの苦労話とかが載っていて、あれはこういう仕組みなのね、とかこういう需要があるからこうなのか、とか、ゲームでは省略されてる要素の知識が得られる。「ごっこ遊び」にはこういう豆知識が大切なのである。なお、この本によると、様々な荷を運ぶ関係上、トレーラー部分は基本オーダーメイドだったものが、最近は、納期の関係もあってシャシーごとレディーメードのものが増えてきてるのだそう。ゲームの世界に近づいているということか。

(日本の)トラック事情を知る

ゲームに慣れてくると、運ぶものを選んで効率よく稼ぐ方法を考えたり、まだ運んだことのないモノ、通ったことのないルートを潰していったりするのが楽しい。高速が通行止めになり(そういうランダムイベントがある。)、大幅なルート変更が必要になって納期に遅れそうになったり、高速でぼんやり巡航しててリアルな眠気に襲われ、事故りそうになったりもするけれど、概ねドライバーとしては一人前な感じが出てくる。(操作アシストつけまくってるので、現実のトラックの運転はとてもできないけれど。) ゲームにはちょっとした経営要素もあって、人を雇ったり支店を増やしたりもできるのだけど、こちらはおまけ要素らしく普通にやってると右肩上がりに成長する。

でも、同乗ルポと業界への取材で最近の日本のトラックドライバー周辺を描いた『ルポ トラックドライバー』を読むと、現実はなかなか厳しい感じ。ドライバーで稼いだお金で一旗揚げる、なんて話も今は昔、現在の業界は「きつい、きたない、危険」に加えて「稼げない」の4Kとも言われるそうで、ドライバーの高齢化が進み、人材不足が深刻とのこと。それでもネット通販の激増を受けて参入してくる個人事業主や、増えつつあるという女性ドライバーの有様が紹介されており、興味深い。また、ドライバー不足を受けた、自動運転や貨客混載などの試みが始まっているとのこと。ゲームにも出てくる、トレーラーを2つ繋げた「ダブル連結トラック」(めっちゃ運転しにくい。)はこれまで日本では未導入だったそうなのだけど、これも導入に向けた実証実験が始まっているらしい。業界の今を知ることができる本だ。なお、トラックの運ちゃんというと、荒っぽいイメージだけど、著者によると穏やかな人柄のドライバーが多いとのことで、確かに、扱うものは大きいけれど、運転にも荷の扱いにも繊細さが求められる仕事なのだから、ある意味当然か。

おわりに

高速道路のジャンクションの写真集とか、ヨーロッパの物流業界事情とかの本があるとよかったんだけど、これまたいいのが見つからなかった。乞うご教授。あと、頻繁に運ぶことになるコンテナについて、その発明をめぐるノンフィクション、『コンテナ物語』を紹介したかった(めっちゃ面白かった記憶がある。)のだけど、今手元になくて読み返せないのでタイトルだけご紹介。

オブリビオンやスカイリムやってるときは、道を歩いてて草花を見つけるとつい目が向いてしまう病にかかっていた。ETS2を始めてからは、路上のトラックが目にとまるようになった。トレーラーとの内輪差を踏まえつつスムーズに曲がったり、器用にバックして搬出口につけたりするトラックドライバーへのリスペクトが止まらない今日コノゴロ。 

2021年の気になる図書館システム関係覚書

2020年中に気になっていて、今後、個人的に注目している図書館システム関係(公共図書館中心)に関する覚書です。独断と偏見でとりとめなく書いています。(ここまでほぼコピペ)

2020年は、コロナ禍をはじめほとんとにいろんなことがあり、特に私的に現在進行形でとてもつらい状況が続いていて、その気分転換に書いています。いつにもまして縮小かつ視野狭い内容ですが、ご容赦ください。なお、昨年のものはこちら。

図書館システム関係

そろそろ勤務先もシステム更新が見えてきたので、昨年はシステムベンダーさんのプレゼンを聞く機会が何度かあり、勉強になった。とはいえ、業務が関わらない(残念ながら)のだからシステムが進化するはずもなく、おお、と思わされるようなものは特になかった気が。まあ、成熟しているといえばしているのかも。

ブラウザベースのシステムは、流石にIEからの脱却が始まっている模様。Edgeでも動きますよ、という声をいくつか聞くことができた。ようやくIEから離れられる。やれやれ。しかし、いまだに商用データベースの多くは、IE11推奨になってて泣ける。特に新聞。IEだと紙面PDFを読みこんだら高確率でコケるんだよね……。

あと、自治体間を超えたシステム統一を検討せよとの話が、上から降りてきたと風のうわさで聞いた。お国が進めるDXとやらの一環かしらん。図書館業務と一口に言っても、ご当地ルールだらけでシステムはカスタマイズ前提の昨今、外圧とはいえ、業務・ルールの共通化が図られるのは良いこと。できるかどうかは別だけど。

ひょっとすると、予約やリクエスト、相互貸借などの各種申込みは原則WEBで受け付け、みたいな流れになって、今まで、「来館&紙に記入」が障壁になっていたお客さんを(よくも悪くも)呼び込むことになるかも。システム仕様書を決めるときは悩むかもなあ。

ウェブサービス関係

相変わらずカーリルさん周りはとても活気がある。Unitrad APIを活用した横断検索が進化して、図書館蔵書だけでなく、地域の博物館の収蔵品や文化財なんかも一度に検索できるようにした例が現れた。松本市図書館さんの「まつサーチ」がそれ。要はExcelシートみたいなリストがあれば検索対象にできるらしい。いろんな応用ができそう。個人的には、日本の公共図書館におけるディスカバリーサービスがここからはじまるのでは、と思わせる。

また、「学校向け蔵書検索サービス」も、可能性を感じさせるサービス。蔵書のリスト(ISBNなど)があれば、無償でOPAC作ります、という恐ろしく気前のいいサービスなのだが、なんと、公民館図書室や、WEBOAPCのない小規模な公共図書館も対象なのだそう。とりあえず都道府県立図書館の協力業務担当者は域内の公民館図書室やら小規模図書館やらに働きかけるべき。

なお、横断検索の実例を横断的に見てみたいと思ったら、Jcrossさんの「横断検索ナビ」が便利。タグで絞り込みも可能。

デジタルアーカイブ関係

ジャパンサーチが2020年8月に正式公開された。まだあまり使いこなしていないんだけど、どんどん多機能かつかっこよくなっていて、連携先も増えてるし、頼もしい限り。

国立国会図書館デジタルコレクションは、2021年1月、ついに全文検索機能が実装された。収録範囲はまだまだ少ないけれど、今後増えていくとのこと。GoogleBook検索では、検索語が載っているらしいことがわかってもスニペットしかなくてどこにあるのか見当がつけづらい(ページ数も間違ってることが多い)んだけど、NDLデジコレなら、うまく行けば原本画像にたどり着ける。これはありがたい。

個人的に大きなトピックだったのは、福井県立文書館さんのデジタルアーカイブ福井で、文化庁長官の裁定制度を活用して明治期の新聞画像が公開されたこと。おまけに、どのようにしてそれがなされたかについての報告*1があるのは嬉しい限り。手法もコストも、やればできるレベルなことが明確になった。なお、ここまで何度も紹介してくださってるのは、「こうすればできるから、みんなやってね、Do you undersand?」という強いメッセージだと受け取るべき、と勝手に思っている。

雑誌「図書館界」の連載「HOT TOPICS〈テーマ1 地域資料とデジタルアーカイブ〉」*2も面白かった。福島さんの「デジタルアーカイブのスリムモデル」が、基礎自治体デジタルアーカイブの一つのスタンダートになるといいと思う。

なお、図書館・デジタルアーカイブと人文学(文学研究)のコロナ禍後の動向と今後の指針については、岡野さんの展望記事*3がとてもよくまとまっていたので是非ご一読を。たとえ泥縄でも、なった縄は実際役に立つし、役に立たせないと。

電子書籍サービス

遅々として進まなかった電子書籍サービスの導入は、コロナ禍にともなう閉館と「新しい生活様式」への対応のために、あれよあれよという間に急進展。電流協さんの調査によると、2021年1月1日現在で143自治体139館が導入とのこと。2020年1月1日現在では91自治体88館だった*4そうなので、50以上増えたことになる。例年、10館増えるか増えないかという状況だったのに。

サービスが広がることはいいことだけれど、以前、光交付金デジタルアーカイブがやたらできたときのように、見切り発車でとりあえず始めました、的な所が多いのではないかと思う。日置さんが指摘*5されているように、今後の継続的な運営に向け、予算確保と収集・サービス方針(紙との棲み分けなど)の策定が大事かも。

あと、ただでさえコンテンツの少ない電子書籍サービス、大阪市立図書館さんのように、こまめで地道な広報活動*6が欠かせない。始めたところからがスタート。

 その他

東京都立図書館さんがLINEのbotを使ったレファレンスの実証実験をしていて(終了済)、なかなか面白かった。AIが簡単な質問に自動応答します、だけじゃなくて、回答に満足いかないときは有人チャットに切り替えらる、という仕組みに、都立さんの覚悟と可能性を感じた。『レファレンスと図書館』の世界が、そのうちチャット上で繰り広げられるようになるんだろうか。

今年の大きなトピックとして、著作権法の改正(予定、詳細は『図書館関係の権利制限規定の見直し(デジタル・ネットワーク対応)に関する報告書』を)がある。これもコロナによる閉館で文献が入手できない、と声から端を発した、複写物をメール等で送れるようにする、との改正(あと、デジコレ(図書館送信資料)がお家で見られるようになるやつも)が行われる見込み。いまのところ、詳細は関係団体のガイドラインで定めることになるとのことで、動向が注視される。送信の際の補償金の金額や徴収方法、対象となる著作物の条件など、かなりモメそうな気も。

お国が何やら声高に唱えているせいで、いったん下火になったマイナンバーカードの図書館における利用についても、一部で動きがあるかも。関係各位はご愁傷さまとしか言いようがない。そんなものより、遠隔複写手数料を電子マネーで払えたり、Googleアカウントで利用者ポータルから電子書籍サービスまでシングルサインオンできたりするほうが、よっぽど「デジタル技術による業務改善」になるのでは、とは思う。

おわりに

どんどんロートルになっている自覚がある今日コノゴロ、新しい動きについていくのが大変。毎年、各学会で「展望」記事を書かれる方々の視野の広さと日々の努力、ほんと尊敬します。

*1: カレントアウェアネス:E2277 文化庁長官裁定制度による明治期地方紙のインターネット公開国立国会図書館サーチ:連携インタビュー第3弾(デジタルアーカイブ福井),田川雄一「文化庁長官裁定制度を用いた地方新聞画像のインターネット公開とその反応」」(「図書館雑誌」115(1) 2021.1 p.26-27

*2:澤谷晃子「No.1 図書館資料のデジタルアーカイブとその活用を考える」(「図書館界」72巻3号 p. 134-138),是住 久美子「No.2 図書館を拠点とした地域資料の編集とデジタルアーカイブの発信」(同 72巻4号 p. 184-188)),福島幸宏「No. 3図書館の未来像のひとつとしての地域資料活用」(同72巻5号 p. 223-227

*3:岡野裕行「敵を見て矢を矧ぐ/矢を矧ぐための敵」(「日本近代文学」103号 p.94-101) 御恵贈ありがとうございました。

*4:The Wayback Machine:電子図書館(電子貸出サービス)実施図書館(2020年01月01日)

*5:日置将之 「座標「コロナ禍における電子書籍の導入について」」(「図書館界」72巻4号)

*6:たとえば、電子書籍のブックリスト「大阪市立図書館 電子書籍EBSCO eBooksで読むSDGs(持続可能な開発目標)」とか面白いなあ。

今どきの中高生は司書の夢を見るか。

コロナのせいで色々シッチャカメッチャカになってるとはいえ、そろそろウチの図書館にもインターンシップ生の受け入れの話が来はじめてる。司書になりたい、図書館で働きたい、という若者がいるのはありがたいこと。

しかし、こないだは、とある集まりで、子供向けの職業紹介本に司書が載ってない、なんて話を聞いた。何しろ正規は限りなく狭き門で、非正規は限りなく労働条件悪い、が長いこと常態化したこの業界、子どもたちの将来の選択肢の一つに、司書が入らなくなってもおかしくない。

というわけで、将来を考え始める中高生向けの職業紹介本で、司書がどのような扱いを受けているか、いくつかご紹介してみたい。といって、関係する本は無数とは言わないまでも、たくさんありそうなので、ウチの図書館のYA向けコーナーに置いてあった本で、目についたものを対象とした。

『中学生・高校生の仕事ガイド 2019-2020年版』

まずは便覧的な奴から。中高生の進路選択に役立つことを目的に、とにかくたくさんの仕事を載せたもの。モノクロで、イラストも写真もないけれど、仕事の掲載数は多い。ちなみに新版が出てるけど、あたしが読んだのはこの版。

「司書/司書補(図書館職員)」の項あり。学校司書、国立国会図書館職員にも言及しつつ、司書の仕事内容を紹介している。ただ、ほかの仕事でもそうなんだけど、給与や待遇についてはあまり記述がない。2003年から民間事業者に業務委託できるようになった、とあるのは指定管理者制度のことかしらん。民間会社に就職して図書館で働いている人「も」いる、という表現もあって、非正規率6割の業界の現状をより詳しく伝えているとはいいがたい気も。

 

カーリルで開く

 

『女子のための「手に職」辞典』

出産、子育てを念頭に、職場復帰のしやすさや子育ての経験が生かせるかなど、女性の働きやすさにフォーカスした仕事辞典。1職業につき見開き2ページで読みやすい。各職業を目指すうえで、読んでおくとよい本・コミックを紹介してるところもありがたい。

「図書館司書」の項あり。勤務形態として、正社員・契約社員などとあって、公務員扱いではないっぽい。(公務員は別枠になってる。)月収15万円程度からで、載っている職業の中では最低ランク。「パート・契約社員として働いたほうが家庭との両立はしやすい」ともあって、まあそうなんだけど、身もフタもないな。コミュニケーション能力が必須、としてるところは個人的にポイント高い。

ちなみに、司書の「読んでみて」な本は、定番の『夜明けの図書館』だった。ここは『司書のお仕事』とかでもいいかな。

カーリルで開く 

『日本の給料職業図鑑』

ウェブサイト「給料BANK」を書籍化したもの。ちなみに、これもこないだ新版が出たけど、あたしが読んだのはこの版のもの。各職業の給料がわかる、というのが売りだが、目を引くのは、各職業をRPG風のキャラクターで紹介したイラスト。その職業のイメージが良くも悪くも集約されている感じ。

「図書館司書」の項あり。タイトルどおり給与が大写しになってるのもこの本の特徴で、司書の場合、平均給与22万とあって、地方公務員扱い。嘱託職員だと月給換算で14-16万と安い(地方だとさらに安い)、とある。資料の整理・管理、利用者対応、レファレンスやイベント・連携の企画立案など、司書の仕事内容についてはおおよそカバー。閉館時間があるので残業が少なく、女性でも働きやすい、とあるけど、ほんとかしらん。ちなみに、サイトの方は掲示板がついていて、対人スキルがないとキツイ上に、特に非正規は待遇悪いことがひしひし伝わるものになっている。

なお、司書のイメージイラストは、女性、三つ編み、マジックユーザーというか魔女っ娘っぽい感じ。バックの分類番号?が微妙に間違ってる気がするのはご愛敬。(ちなみに、件のイラストはここでも見られます。

カーリルで開く

『5分でわかる10年後の自分 2030年のハローワーク

ちょっと変わり種。中学生たちが、AIとバーチャルリアリティで10年後の仕事を体験してみる、という内容。小説仕立てで、技術周りの設定や描写がとてもしっかりしている、と思ったら、著者は、歴とした作家さんだった。

物語としても読み応えがある上、職業紹介本としても、近未来予測としても良くできていると思う。単に、未来の職業をキラキラかつふんわりと紹介するのではなく、アート系なら海外で働く工業デザインの道もあるから英語を学ぶべき、など、進路を踏まえた、地に足のついた中身になっている。こういう進路指導があったら、あたしも随分違った人生だったかもなあ。(遠い目)

巻末に、タイプ別の「AI時代のお仕事診断」がついていて、司書は、漫画とアニメ好きな普通の中学生(文系)がなり得る職業としてチラッと出てくるだけ。出てくるだけましか。

カーリルで開く

 

全然網羅性がないけど、少なくとも、中高生向けの本のいくつかでは、将来の職業として司書が挙げられていることは確か。(AI時代を謳った本ですらも、一応出ては来る。) とはいえ、10年20年先にも、司書が、将来なりたい職業として認知されているか、というか、職業として残っているかどうか、は、なかなか予断を許さない感じ。特に、労働条件の悪さは隠しようもない。

せめて、仕事の内容だけでも、もっとステキな職業として認知されるよう、あたしも頑張ろうと少しだけ思った今日コノゴロ。

それにしても、「図書館司書」ってなってる本が多いんだけど、なんでかなあ、と思ったら、日本標準職業分類でも「図書館司書」だった。文科省(の資格名)は司書なんだけどなあ。博物館学芸員とか言わないんだけど、なんで司書だけそうなのかしら。

コロナウィルス後の図書館(なんて大きなタイトルしか思いつかなかった雑記)

入館制限、消毒液やマスクの調達、果ては臨時閉館にリモートワークと、目まぐるしく変わる状況についていくのが精一杯で、ほんの二月前に何を考えてたか、ちっとも思い出せない始末。怖い。最近は、少し収まりつつあるのかなと思うけれど、秋冬にはまた同じような事態に陥る恐れは大きいのだろう。

しかし、ひとたびなにか起こると、ここまで感染防止・外出自粛が言われるということになると、対面でのモノを介したサービスや、物理的に人を集めることに、(良くも悪くも)腐心してきた近年の図書館は、大きな転機を迎えてるのかもしれない、と思う。ショック・ドクトリンでもないけれど、これを奇貨として、変えられるところは変えていけるといいなと思う。

先日、日本図書館協会は、図書館が読み聞かせの配信をしたり、複写物をメールやファクスで送ることを時限的に可能とするとするよう、要望書を関係団体に提出した。一方、日本出版社協議会は、「この緊急時にあっては、緊急措置としての国立国会図書館のデジタル化資料の公開について可能な限り協力したい」との声明を出している。

日図協はともかく、権利者側である出版協がここまで譲歩を表明するとは、正直、驚いた。NDLデジコレの図書館館送信資料が一時的でもウェブから使えるようになったら、世間的にもかなりのインパクトがありそう。

コロナウィルスの猛威もいつかは収まる(と思いたい)。ただ、完全に収まるまで、断続的に蔓延と収束を繰り返すだろうし、原因こそ違え、同じような事態は今後も起こるだろう。ならば、その時々に応じた臨時措置が柔軟にできることも大事だけど、特別な対応が必要ないように、日頃から整えることも大事だと思う。

各図書館が、自館資料を少しずつデジタル化したり、電子書籍サービスの導入を検討したり、地域の著作権者の没年を調べてNDLに情報提供したりと、できることは色々あるはず。出せるものはどんどんデジタル化して出してゆく。閉館やリモートワークの期間は、そのための準備作業・調査にあてたい。

と思いつつ、エビデンスなきまま感染対策に頭を痛める今日コノゴロ。正直、消毒機はいいのでマスクと手袋とエチルアルコールください……。

 

 

NDLサーチ検索結果のRSSを使って、NDLデジコレの地域資料リストを作る方法メモ(Googleスプレッドシート編)

国立国会図書館デジタルコレクション(以下、デジコレ)に含まれる地域資料のリストを作るときの元データを、国立国会図書館サーチ(以下、サーチ)の検索結果RSSGoogleスプレッドシートで作る方法のメモです。誰得です。

はじめに

地域資料のデジタル化は、どこの公立図書館でも喫緊の課題ではある(はずな)んだけど、マンパワーも資金もないのでなかなか進まないのが現状。

ところで、デジコレには、かなりの量の地域資料が収録されているので、これを使わない手はない。たとえば、デジコレに収録されてる自分とこに関係する地域資料のリスト、みたいなものをウェブサイトに公開するといいのでは、と、ここまでは(たぶん)みんな考える。

それを実現したのが、福岡県立図書館さんの「国立国会図書館デジタルコレクションに含まれる福岡県内で出版された図書」。おお、すごい。これ作るの結構タイヘンだったのでは。おまけに、同ページで公開されてるExcelシートの凡例に作り方のあらましが書いてあってありがたい。

で、今回はこれを参考に、Googleスプレッドシートで簡易バージョン(劣化コピーともいう)を作る方法について、メモとして残しておく。

なお、当方、あんましこの手の知識はない(見よう見まねな)ので、もっと良いやり方があれば教えてください。(API叩いて…とかPythonスクレイピング&整形して…とかのツッコミはナシでお願いしますあたしにゃ無理です。)

要は、サーチの検索結果RSSを、Googleスプレッドシートの関数の一つ、「IMPORTFEED」関数*1で取得して、ちょちょい(でもないけど)と整形して、ブックリストを作るための元データを作ります。この方法の長所・短所は以下のとおり。

長所(少ないな)
  • Office(Excel)なくてもできる。
短所(多いな)
  • Googleスプレッドシートが使える環境でないとできない。
  • 網羅性があるかと言われると辛い(特定の書誌事項から検索して出力させてるので、書誌に検索キー(分類記号など)が入力されてなかったりすると漏れる。)
  • 書誌事項が簡易(例えば、責任表示は一つだけ、とか。版とか、出版月とかは取得できないっぽい。)
  • 取得できる書誌URLがサーチのものなので、デジコレで本文を見るには、サーチの書誌画面から飛ばないといけない。(痛い。)
  • 著作権処理情報が取得できない。「インターネット公開資料」かどうか、わからない。(痛い。)でもまあ、ほとんどの資料は、参加館内でしか利用できない「図書館間送信」扱いだったり。

以下、例として、福岡県内の地誌関係書リストを作ってみる。

1.どういうリストを作るか考える

サーチの検索結果からリストを作るので、まず、どういうリストを作るか、そのリストはどうやったらサーチで出力(検索)可能か、を最初に考える。基礎自治体で作るときは、「出版地」に自治体名を入力すればいい。郡や県域レベルだと、自治体数も多いし、合併とかで名称も変わってるので結構大変。むしろ、「分類記号」に、対象地域のNDLCかNDCを入力したほうが早い。(割り切り)

なお、サーチはOR検索に対応していないので、広域のリストを作ろうと思ったら、自治体名や、NDLCやNDCの細目ごとにRSSを取得する必要がある。ちなみに、福岡県のNDLCは、GC263(福岡県〔 筑前筑後豊前〕)、GC265(北九州市)、GC267(その他の各地)で、NDCは219.1。

2.RSSを取得

サーチの詳細検索で必要な事項を入力して、作りたいリストのための検索結果を表示させる。NDCL「福岡県」の資料だと、「分類番号」に「GC263」を入力して、「データベース」のチェックを「国立国会図書館デジタルコレクション」だけにして検索。

NDLサーチの検索結果画面

なお、検索結果数があまりにも多いと、あとあとの作業がめんどいので、適宜、結果数を調整する(出版年で区切るとか)。

結果が適当ならば、画面右にある「検索結果を出力」にある「検索結果のRSS」をクリックして、表示されたページのURLをコピーしておく。また、検索結果件数をメモっておく。(これ大事)

RSS検索結果のリンクを示した画像

検索結果RSSのURLを示した画面

3.GoogleスプレッドーシートでRSSを取得

Googleスプレッドシートを立ち上げて、最初のセルに「importfeed」関数を入力。引数(関数のあとにカッコで入れるもの)には、「"さっきコピったRSSのURL","items"",true,さっきメモった検索結果件数」を記述。RSSのURLとitemsは、""で囲む。

Googleスプレッドシートに「importfeed」関数を入力した画面

itemsは、RSS検索結果から、何を引っ張ってくるかを指していて、今回は、検索結果資料のタイトル、著者、URLなどの書誌事項がそれに当たる。今回は全部引っ張ってきてます。省略可。"true"は、見出し行(TitleとかAutherとか)を含めるかどうか。見出しあったほうがわかりやすいのでつけてます。

成功すれば、読み込み後、サーチ検索結果を「Title」「Auther」「URL」「Date Created」「Summary」の各列に割り振ったシートができる。

GoogleスプレッドシートでRSSを取得した画面

4.Summaryのセルを整形する

できたシートの各列は、それぞれ、「Title」が書名(タイトル)、「Auther」が(第1)責任表示、「URL」がサーチの書誌ページURL、「Date Created」が出版年で、それぞれそのまま使える。
問題は「Summary」で、巻次、出版者、出版年と、その他(タイトル、タイトル読み、NDC)が一つのセルにごちゃっと入っている。めんどいので、巻次、出版者、出版年だけ取り出すことにする。

なお、関数で編集・作成したセルを更に関数でいじったりするとうまく行かなかったりエラーになったりするので、整形の前に、すべてのセルを文字列にしておく。全選択して、値のみ貼り付け。

同じくGoogleスプレッドシートのSplit関数*2を使って、「Summary」のセルを"-"で分割する。「巻次と出版者、出版年」が入力されたセルと、その他(タイトルほか)のセルができる。
なお、Split関数は、指定した文字で文字列を分割して、別のセルに書き出すもので、ここでは、「Summary」内のその他(タイトル、タイトル読み、NDC)の前に付いている"−"で分割している。

「SPLIT」関数でセルを分割している画面

分割された「巻次と出版者、出版年」のセルには、改行や空白文字があるので、列全体を選択して、メニューの「データ」から、「空白文字を削除」を選択。

分割したセルの空白を消している画面

5.リスト作成のための元データ完成

ここまでで、「Title」「Auther」「URL」「Date Created」「巻次と出版者、出版年」が入力された表の出来上がり。

「巻次と出版者、出版年」のセルを更に","で分割することもできる。でも、巻次が入力されいてないものが(当然ながら)あるので、巻次がある行とない行とで、列がずれちゃうのが困りもの。めんどくさいので(多いな)、ここではそのまま。巻次が一番最後に入力されてたらなんとかなるんだけど。それと、「Date Created」は出版年なので重複してるから削除。

あとは、この表を使って、HTMLを書くなり、WordやExcelで整形して紙で印刷するなりすればOK。件数が少なければ、サーチの書誌URLを手入力でデジコレに差し替えるとなお良い感じ。

おわりに

こんなめんどくさいことしなくっても、NDLから「国立国会図書館デジタルコレクション書誌情報」のデータセットが公開されてるので、これを加工すればいいじゃん、て話なんけど、残念ながら、出版地が入ってない。上記で作成した表と、データセットを突合すれば、もっといいものができるのかもしれない。

以上、参考まで。