BEAYS(新装版)

本と図書館のことについて、つらつら書いてゆくblogです。

ユーロトラックシミュレーター2と読書

ユーロ トラック シミュレーター2(Euro Truck Simulator2,ETS2)というゲームがある。タイトルどおり、大型トラックの運転手として、ヨーロッパの国々をまたいで荷を運ぶ、よく知られたPCゲーム。古いので3Dながら比較的低スペックでも動作し、何よりトラックの挙動や道路(ジャンクションとか)の作り込みが素晴らしいので、遅まきながらすっかりハマってしまった。

こちとら海外旅行経験1回(しかもアジア)のデスクワーカーで地理の成績は最低ランクだったのだけど、ETS2のおかげで、ヨーロッパの道路事情やらトラック野郎(死語)の生態やらに興味が湧いてきて、ちょっと関係する本を読んだりしたので参考(何の?)までにご紹介。

地図帳で地名確認

ゲーム内では、BtoBの物流を担うトラック運転手として、ヨーロッパの都市間を行ったり来たりすることになる。各都市の位置関係やルートはゲーム内のマップでいつでも確認できるし、ナビ(日本語音声付き)もあるので迷うことはないのだけど、車窓から見える山だの川だの湖だの説明がゲーム内にはなく、やっぱり手元に地図がほしい。(いや、GoogleMAP見ろよという話もあるけど、低スペなのでリソースは空けておきたいのです。)

ということで、紙の地図帳の出番。ひとまず『旅に出たくなる地図 世界』で、これはオーデル川?、これはきっとボーデン湖?、などと地名を確認して喜んでた(小並感)。なお、同書は観光情報重視なので、地名確認だけならシンプルかつ大きくて見やすい『ワイドアトラス世界地図帳』のほうがよいかも。ただ、どちらも一般的な地図帳なので、さすがに建造物までは載ってない。ヨーロッパの橋とか塔とかが載ってる本や地図帳を探したんだけどなかった。やっぱり洋書か土木系の専門書かしらん。先学の教えを請いたいところ。

トラックのメカニズムを学ぶ

さて、はじめは雇われドライバーで小金を稼いで、そのうち愛車を買うことになる。当然外車である。ベンツやボルボのようなメジャーなメーカーもあれば、スカニアやマン(ホントはエムアーエヌと読むそうな)のような商業車専門メーカーもある。例によって、シャシーやエンジンをとっかえたり、いろんなパーツを付けたりとカスタマイズもできる。引っ張るトレーラーも色々選べて、冷凍車、車両・重機運搬用、コンテナ運搬用などがあり、トレーラーに応じて運べるもの(つまりは稼げる運賃)が変わってくるので考えどころでもある。とはいえ、現実のトラックのメカニズムはもっと複雑で奥が深いようだ。

『ツウになる!トラックの教本』は、トラックに用いられる技術周りのことを、図や写真でわかりやすく紹介した本。情報は国内メインだけど、トラックの世界はグローバル化されていることもありゲームの理解にも十分役に立つ。また、よくある解説本のような通りいっぺんの説明ではなく、ちゃんと関係者に取材した現場の声が掲載されていて好感が持てる。ゲーム内ではアクセサリー扱いでしかないトレーラーの各種部品とかについても、メーカーの苦労話とかが載っていて、あれはこういう仕組みなのね、とかこういう需要があるからこうなのか、とか、ゲームでは省略されてる要素の知識が得られる。「ごっこ遊び」にはこういう豆知識が大切なのである。なお、この本によると、様々な荷を運ぶ関係上、トレーラー部分は基本オーダーメイドだったものが、最近は、納期の関係もあってシャシーごとレディーメードのものが増えてきてるのだそう。ゲームの世界に近づいているということか。

(日本の)トラック事情を知る

ゲームに慣れてくると、運ぶものを選んで効率よく稼ぐ方法を考えたり、まだ運んだことのないモノ、通ったことのないルートを潰していったりするのが楽しい。高速が通行止めになり(そういうランダムイベントがある。)、大幅なルート変更が必要になって納期に遅れそうになったり、高速でぼんやり巡航しててリアルな眠気に襲われ、事故りそうになったりもするけれど、概ねドライバーとしては一人前な感じが出てくる。(操作アシストつけまくってるので、現実のトラックの運転はとてもできないけれど。) ゲームにはちょっとした経営要素もあって、人を雇ったり支店を増やしたりもできるのだけど、こちらはおまけ要素らしく普通にやってると右肩上がりに成長する。

でも、同乗ルポと業界への取材で最近の日本のトラックドライバー周辺を描いた『ルポ トラックドライバー』を読むと、現実はなかなか厳しい感じ。ドライバーで稼いだお金で一旗揚げる、なんて話も今は昔、現在の業界は「きつい、きたない、危険」に加えて「稼げない」の4Kとも言われるそうで、ドライバーの高齢化が進み、人材不足が深刻とのこと。それでもネット通販の激増を受けて参入してくる個人事業主や、増えつつあるという女性ドライバーの有様が紹介されており、興味深い。また、ドライバー不足を受けた、自動運転や貨客混載などの試みが始まっているとのこと。ゲームにも出てくる、トレーラーを2つ繋げた「ダブル連結トラック」(めっちゃ運転しにくい。)はこれまで日本では未導入だったそうなのだけど、これも導入に向けた実証実験が始まっているらしい。業界の今を知ることができる本だ。なお、トラックの運ちゃんというと、荒っぽいイメージだけど、著者によると穏やかな人柄のドライバーが多いとのことで、確かに、扱うものは大きいけれど、運転にも荷の扱いにも繊細さが求められる仕事なのだから、ある意味当然か。

おわりに

高速道路のジャンクションの写真集とか、ヨーロッパの物流業界事情とかの本があるとよかったんだけど、これまたいいのが見つからなかった。乞うご教授。あと、頻繁に運ぶことになるコンテナについて、その発明をめぐるノンフィクション、『コンテナ物語』を紹介したかった(めっちゃ面白かった記憶がある。)のだけど、今手元になくて読み返せないのでタイトルだけご紹介。

オブリビオンやスカイリムやってるときは、道を歩いてて草花を見つけるとつい目が向いてしまう病にかかっていた。ETS2を始めてからは、路上のトラックが目にとまるようになった。トレーラーとの内輪差を踏まえつつスムーズに曲がったり、器用にバックして搬出口につけたりするトラックドライバーへのリスペクトが止まらない今日コノゴロ。