BEAYS(新装版)

本と図書館のことについて、つらつら書いてゆくblogです。

今どきの中高生は司書の夢を見るか。

コロナのせいで色々シッチャカメッチャカになってるとはいえ、そろそろウチの図書館にもインターンシップ生の受け入れの話が来はじめてる。司書になりたい、図書館で働きたい、という若者がいるのはありがたいこと。

しかし、こないだは、とある集まりで、子供向けの職業紹介本に司書が載ってない、なんて話を聞いた。何しろ正規は限りなく狭き門で、非正規は限りなく労働条件悪い、が長いこと常態化したこの業界、子どもたちの将来の選択肢の一つに、司書が入らなくなってもおかしくない。

というわけで、将来を考え始める中高生向けの職業紹介本で、司書がどのような扱いを受けているか、いくつかご紹介してみたい。といって、関係する本は無数とは言わないまでも、たくさんありそうなので、ウチの図書館のYA向けコーナーに置いてあった本で、目についたものを対象とした。

『中学生・高校生の仕事ガイド 2019-2020年版』

まずは便覧的な奴から。中高生の進路選択に役立つことを目的に、とにかくたくさんの仕事を載せたもの。モノクロで、イラストも写真もないけれど、仕事の掲載数は多い。ちなみに新版が出てるけど、あたしが読んだのはこの版。

「司書/司書補(図書館職員)」の項あり。学校司書、国立国会図書館職員にも言及しつつ、司書の仕事内容を紹介している。ただ、ほかの仕事でもそうなんだけど、給与や待遇についてはあまり記述がない。2003年から民間事業者に業務委託できるようになった、とあるのは指定管理者制度のことかしらん。民間会社に就職して図書館で働いている人「も」いる、という表現もあって、非正規率6割の業界の現状をより詳しく伝えているとはいいがたい気も。

 

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『女子のための「手に職」辞典』

出産、子育てを念頭に、職場復帰のしやすさや子育ての経験が生かせるかなど、女性の働きやすさにフォーカスした仕事辞典。1職業につき見開き2ページで読みやすい。各職業を目指すうえで、読んでおくとよい本・コミックを紹介してるところもありがたい。

「図書館司書」の項あり。勤務形態として、正社員・契約社員などとあって、公務員扱いではないっぽい。(公務員は別枠になってる。)月収15万円程度からで、載っている職業の中では最低ランク。「パート・契約社員として働いたほうが家庭との両立はしやすい」ともあって、まあそうなんだけど、身もフタもないな。コミュニケーション能力が必須、としてるところは個人的にポイント高い。

ちなみに、司書の「読んでみて」な本は、定番の『夜明けの図書館』だった。ここは『司書のお仕事』とかでもいいかな。

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『日本の給料職業図鑑』

ウェブサイト「給料BANK」を書籍化したもの。ちなみに、これもこないだ新版が出たけど、あたしが読んだのはこの版のもの。各職業の給料がわかる、というのが売りだが、目を引くのは、各職業をRPG風のキャラクターで紹介したイラスト。その職業のイメージが良くも悪くも集約されている感じ。

「図書館司書」の項あり。タイトルどおり給与が大写しになってるのもこの本の特徴で、司書の場合、平均給与22万とあって、地方公務員扱い。嘱託職員だと月給換算で14-16万と安い(地方だとさらに安い)、とある。資料の整理・管理、利用者対応、レファレンスやイベント・連携の企画立案など、司書の仕事内容についてはおおよそカバー。閉館時間があるので残業が少なく、女性でも働きやすい、とあるけど、ほんとかしらん。ちなみに、サイトの方は掲示板がついていて、対人スキルがないとキツイ上に、特に非正規は待遇悪いことがひしひし伝わるものになっている。

なお、司書のイメージイラストは、女性、三つ編み、マジックユーザーというか魔女っ娘っぽい感じ。バックの分類番号?が微妙に間違ってる気がするのはご愛敬。(ちなみに、件のイラストはここでも見られます。

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『5分でわかる10年後の自分 2030年のハローワーク

ちょっと変わり種。中学生たちが、AIとバーチャルリアリティで10年後の仕事を体験してみる、という内容。小説仕立てで、技術周りの設定や描写がとてもしっかりしている、と思ったら、著者は、歴とした作家さんだった。

物語としても読み応えがある上、職業紹介本としても、近未来予測としても良くできていると思う。単に、未来の職業をキラキラかつふんわりと紹介するのではなく、アート系なら海外で働く工業デザインの道もあるから英語を学ぶべき、など、進路を踏まえた、地に足のついた中身になっている。こういう進路指導があったら、あたしも随分違った人生だったかもなあ。(遠い目)

巻末に、タイプ別の「AI時代のお仕事診断」がついていて、司書は、漫画とアニメ好きな普通の中学生(文系)がなり得る職業としてチラッと出てくるだけ。出てくるだけましか。

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全然網羅性がないけど、少なくとも、中高生向けの本のいくつかでは、将来の職業として司書が挙げられていることは確か。(AI時代を謳った本ですらも、一応出ては来る。) とはいえ、10年20年先にも、司書が、将来なりたい職業として認知されているか、というか、職業として残っているかどうか、は、なかなか予断を許さない感じ。特に、労働条件の悪さは隠しようもない。

せめて、仕事の内容だけでも、もっとステキな職業として認知されるよう、あたしも頑張ろうと少しだけ思った今日コノゴロ。

それにしても、「図書館司書」ってなってる本が多いんだけど、なんでかなあ、と思ったら、日本標準職業分類でも「図書館司書」だった。文科省(の資格名)は司書なんだけどなあ。博物館学芸員とか言わないんだけど、なんで司書だけそうなのかしら。