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BEAYS(新装版)

本と図書館のことについて、つらつら書いてゆくblogです。

都道府県図書館が構築したデジタルアーカイブの利用条件に係る一所感~PD作品の画像は誰のものか~

2017年5月4日付けの朝日新聞に、「日本の美術館は、所蔵するパブリックドメイン作品の画像の貸出しに慎重」という主旨の記事が載っていた(要ログインだし、どうせ消えるのでリンクしない)。調査した公立美術館のほとんどで、パブリックドメインになっている作品にもかかわらず、その画像の利用が申請制になっていて、自由に使えない、とのこと。早速、図書館の状況についても調べてみた(GWで暇だったので)。

もちろん網羅的に調べるわけにもいかないから、都道府県立図書館のウェブサイトで公開されているデジタルアーカイブについて、収録されたコンテンツの二次利用、すなわち、出版物への掲載、放送等の可否と手続きを調査対象とした。

都道府県立図書館のウェブサイトトップからリンクされている(WEB公開されている)デジタルアーカイブを対象とし、館内公開のみのものは除いた。また、HTMLに画像を張り付けただけのものでも、コンテンツ全体が利用できる場合は対象とした。なお、自館作成のコンテンツ(館報や要覧の類)のみを公開しているものは対象としなかった。

結果は以下のとおり(2017年5月4日調査)*1

  • 条件を満たせば申請不要:5自治体
  • 申請が必要:23自治体
  • 問い合わせが必要:6自治体
  • 不明:7自治体
  • デジタルアーカイブなし:6自治体

結果をまとめたものはこちら

47自治体のうち、デジタルアーカイブが見当たらなかったのは6自治体。残り41自治体は何らかの形でデジタルアーカイブを公開していた。ざっと見る限り、ほとんどのデジタルアーカイブの主要なコンテンツは、古典籍などのパブリックドメイン作品と思われた。

にもかかわらず、公開自治体のうち、条件を満たせば手続不要としているのは、たったの5自治体(宮城県秋田県山形県、神奈川県、高知県)。大多数となる23自治体が、営利非営利を問わず「要申請」扱い。条件を全く示さず、ただ「問い合わせてね」としてるところも6自治体。美術館と似たり寄ったり。もちろん、まだ著作権が残っているコンテンツが収録されている場合もあるので一概には言えないが、図書館も、全体として、パブリックドメイン作品の画像等を使わせることに「慎重」のようだ。

おまけに、利用条件を明示してないとこが7つもあるんだけど、どうなんだろう。また、サムネイルやメタデータの利用について明示しているとこは、1つも見つけられなかった。これもどうか。

たぶん、中の人たちとしては、できる限り積極的に利用してもらいたいと思っているに違いない(と思いたい)。それでも、利用を申請制にしたり、問い合わせを求めるのは「不適切な」利用(郷土の偉人の画像が、飲み屋の看板に使われるとか)を避けたいとか、利用実態を把握したい、ということなのだろう。まあ、利用実態の把握をいうのならば、どの程度利用申請があるのかについては、公表して欲しい(レファレンスにも役立つし)。例えば、大阪府中之島図書館のように。

www.library.pref.osaka.jp

それから、制限する根拠もよくわからない。法にはとんと疎いのでナンだけど、著作権が消滅し、パブリックドメインとなった作品(のみ)を収録した資料については、資料(有体物)をコントロールする権利(所有権)は所蔵する図書館が持っているとしても、その画像、すなわち無体物をコントロールする権利はなくなっている、とみなされるのではないかと思うんだけど、どうなんだろ、教えてエライ人。

ちなみに、申請不要としている館の多くは、クリエイティブコモンズを(全てのコンテンツではないにせよ)採用している(宮城県秋田県、神奈川県、高知県の4自治体)。また、大阪府はちょっと特殊で、基本、申請が必要としてるけど、オープンデータの一環としてごく一部の資料のみCC BYで提供している(この調査では要申請とみなした)。また、コンテンツの有償での二次利用をうたった「おおさかアーカイブス」なんてのもある。これはこれで、いろいろ大変そう。

国の報告書「知のデジタルアーカイブ―社会の知識インフラの拡充に向けて―」なんかを眺めるに、デジタルアーカイブは、自分とこで作っておしまい、ではなく、連携も含め、どのように使ってもらうか、を考える時期に来ているように思われる。そのために、アーカイブされたコンテンツについて、何を、どこまで、どう使えるのかを明示する必要があるように思われる。今後の課題、ということにしておく。

 

*1:カウントは自治体単位で行い、利用条件の異なる複数のデジタルアーカイブを公開している自治体については、便宜上、利用条件がより緩いものとしてカウントした(例:1つは申請不要、1つは条件不明の、2つのデジタルアーカイブを公開している自治体については、「申請不要」としてカウント)。