BEAYS(新装版)

本と図書館のことについて、つらつら書いてゆくblogです。

2019年の気になる図書館システム関係覚書

2018年中に気になっていて、これからも個人的に注目していきたい図書館業務システム(主に公共)、ウェブサイト及びサービス、デジタル資料などについて、ざっとまとめる。システム担当から外れてはや2年なので、最新情報を追っかけてるわけではまったくないのだが、こういうのをものしてると色々教えていただけることも多いので。

なお、主に公共図書館を対象とした、2019年1月27日現在のお話です。ちなみに昨年のはこちら

図書館業務システム関係

書影付きのウェブOPACが珍しくなくなってきた。書影については、多くがGoogleブックス由来と思われる。OpenBD由来は野田市立図書館さんくらいか。2018年6月から、国立国会図書館サーチのAPIでも書影が扱えるようになったのだが、新刊中心のせいか、利用している館はまだない模様。

(2019年1月28日追記:BOOKデータASPサービス(日外アソシエーツ)の採用館が40館以上あるとのこと。コメントありがとうございます。)

書影があると、資料の中身や鮮度が直感的に伝わるので、検索の利便性は大きく向上すると思う。とはいえ、書影表示はたいていオプションなので、どのくらい効果があるのかのエビデンスがないと、なかなか追加予算も取りにくい。どこかが調べてくれないかしらん。

カーリルさんとこは相変わらず元気。Unitrad API採用の横断検索サイトは20を超えた模様。(カーリルさんから貰ったパンフより) 複数の自治体による広域連携の動きがあるけれど、例えば、県境を越えた生活圏を作ってるようなところで、Unitrad APIを使った横断検索サイト作ったりすると面白いかも。

また、同じくUnitrad APIを使った砺波市立図書館のOPAC「となみっけ」は、なかなか衝撃的。館内もウェブも同じシンプルな画面で、自館だけでなく、県内図書館の蔵書、果ては近県分の所蔵まで一度に検索してしまう。いわば横断検索をメインに据えた形。おまけに、自館になかった資料には、所蔵館が記載された予約カードをPDFで出力するボタンが出る。相互貸借は、いろいろ調整が必要なサービス(借受先の分散とか、購入リクエストへの切り替えとか)だけど、なにより、よその図書館から借りられることをはっきり「見える化」したのは英断だと思う。導入の経緯と運用の状況を聞いてみたいところ。

あと、日立さんは図書館システム(の販売)からは撤退とのこと。寡占がさらに進むなあ。図書館システムのデータ移行問題検討会の報告書も出たけど、データの共通化は、寡占化とクラウド化とで自ずから進んでいくのかしらん。

ウェブサービス関係

著作権法の改正により、2019年1月1日から「電子計算機による情報処理及びその結果の提供に付随する軽微利用等(第47条の5関係)」の規定が改められた。要はGoogleブックスにおけるスニペット表示のたぐいが条件を満たせば無許諾で可能となった。Googleブックスによる書籍の全文検索は、もはやレファレンス業務に必須(当方調べ)。1月1日から強化されるかもと淡い期待をしたけども、特に変わった風もないのでがっかり。今後に期待。

国立国会図書館オンラインがスタートして一年が経過した。当初はちょっと重いかなと思ったのだけれど、今は特に違和感もなく使えている。リサーチ・ナビの目次データベースも検索対象になってるのはありがたいのだけど、全部ではない、という話も聞くので、調べものには結局リサナビも手放せない。

国立国会図書館デジタルコレクションもマイナーチェンジして、目次から本文のコマへのリンク機能やらが追加されて便利になった。2014年に図書館向けデジタル化資料送信サービスが始まったときは、膨大な資料(でも古いのばっかり)を前にして戸惑いのほうが強かったけれど、本家でも「明治から昭和前期に刊行された写真集」のような、テーマで資料を簡単に探せるページができてる一方、福岡県立図書館さんの「国立国会図書館デジタルコレクションに含まれる福岡県内で出版された図書」のように、外部からデジコレの資料を使いやすく再編集することも行われるようになってうれしいかぎり。なお、国会図書館さんでは今も地道な著作権者の調査が続けられており、著作権者情報の公開調査なんてのも行われている。例えば、都道府県立図書館の郷土人物情報データベースを使ったら、案外簡単に著作者の没年が見つかることもあるので、ぜひご協力を。

そしてもうすぐジャパンサーチ(仮称)が試験公開される。分野や館種を超えた横断検索で、どんなものが見つけられるようになるのか、楽しみ。個人的にはオープン化(メタデータ含む)という概念が、これを機にMLA界隈にさらに定着するといいなと思う。

デジタルアーカイブ関係

デジタルアーカイブのオープン化が少しづつ進んできた。ARGの岡本さんの調査によると、2018年9月時点で、都道府県立図書館のデジタルアーカイブで、パブリックドメインまたはクリエイティブコモンズを採用している図書館は4館とのことで、今後も増えていくと思う。
ただ、クリエイティブ・コモンズ適用すれば全てはOK、という単純な話でもない。ウェブ上にアップロードした古典籍・古文書類(著作権消滅済み)には、所有者の使用権は働かないと思われるので、利用に何らかの条件を付すこと自体が法的にはナンセンス。とはいえ、お金をかけて電子化して公開して維持管理するコストや責任は当然発生するわけで、せめて、使用の連絡とか所有元の表示くらいはさせてほしい、というのもごもっとも。提供元にもメリットのある利用条件とその表示のさせ方については、永崎研宣さんの「オープンライセンス表示に一工夫を」をご参照ください。検討が進むといいな。

電子書籍関係

電流協さんによると、2018年10月現在の公共図書館での導入館は78館(自治体数では81)。2017年の報告書では65館だったので、毎年10館強のペースで増えてることになる。自治体数のほうが多いのは、兵庫県の4市町が合同で運営している「播磨科学公園都市圏域定住自立圏電子図書館」てのがあるため。こういう、生活圏で一括契約というのが今後増えるかも。

 2019年4月からは、学校図書館向けに定額制の電子書籍サービスがはじまるというし、そろそろ公共図書館にも本格的に導入が進むかも……、まあ、数年はないか。むしろ、書庫問題に悩む都道府県立図書館が、紙の資料費減らして電子書籍サービス導入、なんてのが意外と現実味があるかも。

おわりに

先日、国会図書館の人のお話を聞く機会があったのだけど、デジタル化関係とかで、自前のツールをPythonで作ったりするとのこと。当方、BASICで挫折してから幾星霜、な人だけど、今年は何か学べるといいなあ。