BEAYS(新装版)

本と図書館のことについて、つらつら書いてゆくblogです。

2018年の気になる図書館システム関係覚書

2017年中に気になっていて、これからも個人的に注目していきたい図書館業務システム(主に公共)、ウェブサイト及びサービス、デジタル資料などについて、ざっとまとめる。昨年からシステム担当ではなくなってしまったし、総合展とかにも全然参加できていないので、情報偏ってますがあしからず。なお、主に公共図書館を対象とした、2018年1月10日現在のお話です。ちなみに昨年のはこちら

図書館業務システム関係

例によって大きな変更はないものと思われる。クラウド化のさらなる進展くらいか。図書館って、基本保守的なところだし、業務自体も今のところはまだ旧態依然なので、業務システム自体の進化は滞っているように思われる。でも利用者は確実に変わっているので、せめてインターフェースくらい今風に、例えば音声入力・フリック入力に標準対応したOPACとかは普通にどんどん出てきて欲しい。

また、マイナンバーカードの図書館利用実証実験が2017年秋から始まり、導入館も現れている。ざっとググったかぎり、都道府県立では京都府愛媛県鹿児島県が導入済みの模様。各館のシステム更新に伴い、(需要の有無にかかわらず)採用館が増えてくるものと思われる。

横断検索については、都道府県立でカーリル Unitrad API(以下Unitrad API)を採用したとこが増えてきた。京都府に続き、山口県鹿児島県が採用。その他、長野県でも、既存の横断検索とは別に試験導入している。こちらもシステム更新が進むに連れて、採用館が増えてくるものと思われる。また、都道府県レベル以外でも、「さばサーチ」鯖江市など)、「まるはち横断検索」名古屋市内の公立・大学・専門図書館)とかの、生活圏内の図書館を横断検索するサイトは面白い取り組みで、確かに需要ありそう。

なお、Unitrad APIが高速なのは散々言われてることなので、検索結果がパーマリンクになること、URLの引数の書式がシンプルなこと(”/?q=xxxx”でOK)は特筆しておきたい。あと、Unitrad API採用の横断検索サイトは見た目が良い(大事)。フォームもチェックボックスも控えめだし、アイキャッチもかわいいもの、シックなものが多い。さばサーチのアライグマと、恩納村ぞうさんがいい感じ。一方で、Unitrad APIは主にISBNで同定する仕組みのため、ISBNのない資料の書誌割れの対応が課題。対応策となる「L-Crowd「都道府県総合目録の将来像に関する研究プロジェクト」」の成果が待ち遠しいところ。

なお、システム更新の円滑化を目的に協議していたJLAの図書館システムのデータ移行問題検討会は、今年3月まで延長して存続することとなった模様。一筋縄ではいかない問題だけに、じっくりと成果を練り上げて欲しい。

ウェブサービス関係

書誌と書影が使えるということで話題になったOpenBD、いまのところシステムに組み込んでるのは野田市立図書館の新着図書RSSくらいか。Googleブックスの書影を使ったOPACもそう珍しくなくなったことだし、ベンダーさんに採用の動きはないのかな。

(2018年2月21日追記訂正:野田市立図書館の蔵書検索でもOpenBD(とGoogleブックス)の書影を使用中とのこと。コメントありがとうございました。)

国立国会図書館では、NDL-OPACの後継、国立国会図書館オンラインがつい先日、供用開始した。今のところ、かなりレスポンスが重たいのが難点だが、とても見やすくなって好感持てる。とくに、デジタル化資料に目立つアイコンがついて見分けやすくなった。また、リサーチ・ナビでしか検索できなかった「目次データベース」(大量の参考資料の目次が登録されていてむっちゃ便利)も統合されるとのことだったが、いまいち効果が見えない。まだインデックスされてないのかも。

電子書籍サービスも相変わらずか。『電子図書館・電子書籍貸出サービス 調査報告 2017』によると、公共図書館での導入館は65館。2016年版では53館(注:リンク先PDF)だったので、10館強の増加、まだまだ少ない。いわゆる障害者差別解消法対応を謳って普及を目指す、という話もあったけど、障害者にとって使いやすいサービスではまだない、との話も聞く。昨年、某社のデモ版の試用をさせてもらったことがあるけれど、使い勝手云々以前に、入ってるコンテンツの少なさにゲンナリした記憶が。デモ版なんだから、むしろこんなに入ってます、使えます、ってのを見せないといけないんじゃないのかな、とよそのことながら心配になった。とはいえ、世間様の電子書籍への移行は進んでるらしいので、どこかで導入に踏み切らないといけない訳で、隔靴掻痒。

なお、「横浜市立図書館ウェブサイトにおける広報効果の現状報告 : ウェブ解析ソフトによるアクセス分析」という文献が、「現代の図書館」に載っていた。何の事はないGoogleアナリティクスを使ったアクセス分析の論文なのだけど、図書館で同様の文献はとても少ない気がする。Googleアナリティクスを導入している図書館サイトは結構あるはずなのだが、ちゃんと使ってるところはどのくらいあるんだろう。

デジタルアーカイブ関係

デジタルアーカイブも随分増えてきた。思うに、最近のトレンドは、使い勝手のよさ。最近、リニューアル公開された青森県立図書館デジタルアーカイブがよく表しているんだけど、システム的な使い勝手は言わずもがな、コンテンツの利用条件がすごく整っていて、パブリックドメインは自由利用可、そうでないものも条件を満たせば利用可、余計な申請手続きは不要。これが当たり前になって欲しい。総務省の 「デジタルアーカイブの構築・共有・活用ガイドライン」(注:リンク先PDF)でも、「公的機関の、又は公的助成により作成されたデジタルコンテンツについては、無償での再利用に問題のないものについては、原則として、CC0又は(政府標準利用規約と互換性のある)CC BYを適用することが求められる」とあるのだから。これができて初めて、ジャパンサーチ構想やIIIFみたいなものが生きてくる。 

最後に

LRGの19号に載った「特集 カーリルがハックする「図書館システムの現在」」には考えさせられることが多かった。図書館員の常識は、一般の非常識。『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』でも読むべきか。(と思ってNDLサーチ引いたら、あんまり持ってる都道府県立ないんでやんの(泣))

日常的にウェブやスマホ、PCに接している我々図書館員なのに、いまだに「システムに強い人」は希少種な状況は変わらない模様。少しでも改善するために、何ができるのか、考えていきたいと思う今日コノゴロ。