BEAYS(新装版)

本と図書館のことについて、つらつら書いてゆくblogです。

「受付件数ゼロ」のレファレンスサービスを目指して

先日、とある研修で、医療情報支援サービスをやっている図書館の方のお話を聞く機会があった。いろいろ得るものがあったのだけれど、とりあえず一つだけ、驚いて、かつ嬉しかったことを書いておく。

その図書館では、数年にわたって継続的にサービスを行っており、コーナーを作ったり、ブックリストを作ったり、外部と連携して講座をしたり、と、非常にオーソドックスな事業を展開していた。

ところが、その図書館のレファレンス担当によると、最近、医療関係のレファレンス受付が、心なしか「減ってきている」のだという。

課題解決支援サービスを、一時の流行、ファッションととらえる方々からすれば、それ見たことか、と思われるかもしれない。でもこれは、すごいことだ。お客様は、図書館員にわざわざ尋ねることなく、自分でコーナーへ行き、ブックリストを参考に、自分に必要な本を自分で探している、ということなのだから。まさに『地域の情報ハブとしての図書館』のいう「個人の自立化支援」としての具体的な成果だと思う。

具体的な統計データがあるわけでもない、ただの印象に過ぎないのかもしれない。すそ野が広がれば問い合わせは増えるはずで、何のことはない、やっぱりお客様から見放されているのかもしれない。研究者によるちゃんとした調査ができるとよいと思う。

それはともかく、貸出を増やす、来館者を増やす、と、数字が増えることでしか存在意義を示せなかった図書館が、数字が「減る」ことを誇れるようになった、というのは、ちょっと嬉しい驚きだった。

究極の支援は目に見えない、支援されていると感じさせないものだと思う。「レファレンス受付件数ゼロ」を目標とするレファレンスも、夢じゃないのかもしれない。