BEAYS(新装版)

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マイナンバーカードの図書館利用にかかる対策について(私案)

総務省から2016年秋に発表された、マイナンバーカードの図書館利用は、複数の図書館の利用カードをマイナンバーカード1枚にまとめることができる、という、極めて利便性に富む画期的な取組である。

様々なクレジットカード、ポイントカード等の乱立により、国民の財布は日々厚くなる一方であり、対応に苦慮しているところである。マイナンバーカードが図書館利用カードの代わりになることで、その分だけ財布の厚みが軽減され、財布及びポケット、カバン類の耐久性が著しく向上するなど、経済的にも大きな効果が期待されるところである。

しかしながら、画期的な取組にはつきものではあるが、導入にかかるコスト等が不明といった瑣末な問題から、今夏にも予定されているという導入にあたって、不安や疑義をもつ図書館も多いと漏れ聞く。

そこて、ここでは、マイナンバーカードの図書館利用を円滑に導入するための方策について、2つの私案を提示したい。なお、マイナンバーカードの図書館利用については、まだ未確定の事項も多い。あくまで、現時点で提案者が理解している情報に基づいて検討したものであることを申し添える。

1 図書館利用カードの共通化の前倒し推進

マイナンバーカードの図書館利用のメリットは、複数の図書館利用カードを1枚にまとめることができる、ということに尽きる。複数のカードをまとめたい、との欲求は万人のものであり、例えば、カルチュア・コンビニエンス・クラブ社のTポイントカードは、そのような発想*1のもとにつくられ、広範な支持を得て普及していることは論をまたない。図書館の世界では、今までこうした潜在ニーズが積極的に汲み取られることはなかったため、図書館職員にもお客様にも、カードをまとめることの利便性が必ずしも浸透していない。

そこで、マイナンバーカードの図書館利用に先立ち、現行図書館利用カードの共通化を前倒しで推進することを提案したい。図書館職員、お客様ともに、カードをまとめることのメリットを体感すれば、マイナンバーカードの図書館への導入も円滑に行われるのではないかと考えるものである。

具体的には、都道府県立図書館が、域内の市町村の図書館利用カードでも利用できる仕組みを構築するのが効率的と考える。通常、図書館利用カードの番号体系は館により異なることが多く、番号の重複なども容易に想定される。市町村同士の共通化と比べれば、都道府県立と域内市町村立との共通化の方が、組み合わせも減って対応が容易と考えられる上、ニーズや現状にも合致するものと思われる。

課題として、番号体系の差異の克服が挙げられる。運用にあたって、例えば、システム的に、利用者のIDとカード番号を分けて管理するなどの工夫が必要である。また、システム的に対応が困難な場合は、市町村立図書館の図書館利用カードのスペース(裏面等)に、都道府県立図書館の利用カード番号をバーコード化して貼付する(バーコード印刷可能なテプラ等を活用することが想定される。)ことも考えられる。

なお、可能なかぎり、生活圏を一にする市町村については、同様に、カードの共通化を積極的に行うべきであることは言を俟たない。

2 お客様アンケートの活用

公共施設である公立図書館において、新規の取組に一番影響を与えるのは、納税者であるお客様の声であろう。マイナンバーカードの図書館利用について、導入前に、お客様の期待の声を集めることは、導入に向けた大きな原動力となり、仮に不慮のコストが発生した際にも予算獲得に寄与するはずである。すなわち、アンケートの実施により、お客様の賛意を見える化するのである。

当然ながら、アンケートにあたっては、導入にかかるお客様の不安や疑義を払しょくするため、取組にかかる特徴、課題等を丁寧に周知する必要があろう。すなわち、

  • 貸出記録等がマイナンバーカードに保存されるものでないこと(安心)
  • マイナンバーカードにマイキーIDをお客様自身で登録する必要があること(他人の手を介さないセキュリティの高さ)
  • 利用したい図書館の図書館利用登録は行う必要があること(やむなし)
  • 図書館利用カードの番号を活用したサービス(ウェブサービスや自動貸出機、席予約等)については、マイナンバーカードで代用することができないこと(カウンターで本が借りられれば十分)

などなど、丁寧にご説明したうえで、マイナンバーカードの図書館利用の導入の必要性について、アンケートを実施し、マイナンバーカードを図書館利用カードとして使いたい、というお客様の声を集めるのである。

なお、できるかぎり、1で示したカードの共通化が実現した段階で行うことが望ましい。実際にカードをまとめることの利便性を体感したお客様からは、マイナンバーカードの図書館利用について、熱烈な賛意が寄せられることは容易に想像できるであろう。

最後に

ここに示した案はあくまで私案であり、おそらくもっと効果的な方法があるものと思われる。繰り返しになるが、マイナンバーカードの図書館利用は、増え続けるカードをまとめたい、という国民の切実な要望に応えるものであり、その利便性の向上に大きく寄与する画期的な取組である。図書館界は、このような潜在的かつ強い要望に今まで応えることができなかったことについて、大いに恥ずべきであるが、まだ遅くはない。ぜひ、各図書館が知恵を絞り、取組の導入推進に向け、邁進すべきである。

参考文献:JLA図書館の自由通信:マイナンバーカードの図書館利用について

 

*1:Tポイントの発想については、例えば、こちらで語られている。