BEAYS(新装版)

本と図書館のことについて、つらつら書いてゆくblogです。

魚網のレファレンス・ジレンマ

「漁業で使う魚網の編み方・修理の仕方が知りたい」というレファレンスを受けた。
農業だったら技術関係の本や雑誌は多いんだけれど、漁業のは(出版も所蔵も)そう多くない。だから、まず水産業の棚へダッシュ、みたいな正面突破だけではそうそう回答できない。
伝統的な技術だから民俗学の報告書とか資料集に出てないかな、とか、サバイバルで使えそうだし、アウトドアの本に載ってないかな、とか、絡め手をあれこれ考えつつ、試行錯誤する。これってたぶん、レファレンスの醍醐味の一つ。
レファ協にはすでに同じような事例が何件か登録されていて、たとえば次の東京都立図書館の事例は、たぶん目の配り方としては申し分のない感じ(大変参考になりました)。
「抄い(すくい)あみ、かぶせあみ、投あみなどの網の編み方、修理の仕方の載っている本を紹介してほしい」
結びかたやロープワークの本に載ってる、というのは正直、盲点だった。網はひもを編んで作ってあるんだから、当然といえば当然なのだけど。
で、無事回答できて、また一つ賢くなっ(たような気がし)て、めでたしめでたし、なのだけれど、ふと立ち止まって考えてみる。
一筋縄ではいかない質問に、あれこれと試行錯誤しつつ、複数の視点から資料を探すのは、一司書としては大変楽しいひと時(いかにも専門職っぽい、どうだって感じ)。でも、お客様にしてみれば「網の編み方」さえ解ればよかったわけで、それが漁業技術の本であろうが民俗学の本であろうが、別にどうということもない。
この試行錯誤の楽しさ、プロセスの面白さを、一人でも多くの人に伝えたい、わかって欲しい、と思う。一方、そんな手間をかけなくても結果だけをスムーズに探せるようにしたほうがよっぽど良いじゃん(それこそ、レファ協に事例として登録するとか)、とも思う。
書いててなんだかよくわからなくなったけれど、なんとなくアンビバレントな今日コノゴロ。