BEAYS(新装版)

本と図書館のことについて、つらつら書いてゆくblogです。

貸出履歴問題雑感

かつて、司書のステータスといえば、目録がとれることやレファレンスができることだった。
でも、今はほとんどの図書館がMARCを買っていて、カタロガーなんて絶滅危惧種になった。レファレンスも、検索エンジンをはじめとするWebの力に押されまくりだし、レファ協のようなレファレンスのデータやノウハウを共有化する動きが広まっている。
目録法やレファレンスのような司書の専門的な能力は、現場での知識と経験の積み重ねにより培われるものだ。でも今、それらは技術の進歩や業務の効率化、雇用制度の変化によって、司書ならではの「専門」的な職能ではなくなったり、変質してきたりしている。特に個人のスキルとして職人芸的・徒弟制度的に身につけた暗黙知(であるがゆえに専門的なもの)ではなくなりつつあるように思う。
カウンターでのやり取りなど、日々の業務からお客様の顕在・潜在的要求を読み取り、選書や読書案内、新規サービスの開発につなげることで、本と人を結びつける、というのも、司書の専門的能力の一つ。でも、知識と経験の蓄積によってのみ可能だったはずの「類書にこんなのもありますよ」な資料紹介とか「あのお客さんならこんな本が好きかも」みたいな判断さえも、統計データとシステムだけでできるようになるかもしれない(オンライン書店では当たり前に実現していて、もっと精度が上がるかもしれない)。「貸出履歴、恐ろしい子!(白目)」……。
数年前にWebcat-plusが公開されたとき、「これはすごいことになった」と思った。入力したキーワードに応じて、関連する資料を連想検索してくれるというのはとても便利だ(まあ、今のところノイズが多すぎるきらいはあるけれど)。でも、当方の目には、本の専門家としての司書の領域を侵すものに映った。脅威だと思った。
今、読書の秘密とのかかわりから貸出履歴によるサービスを否定的にとらえている人々は、無意識的に、同じような怖れを感じとっているのかもしれない、と勝手に思った今日コノゴロ。