BEAYS(新装版)

本と図書館のことについて、つらつら書いてゆくblogです。

魚網のレファレンス・ジレンマ

「漁業で使う魚網の編み方・修理の仕方が知りたい」というレファレンスを受けた。 農業だったら技術関係の本や雑誌は多いんだけれど、漁業のは(出版も所蔵も)そう多くない。だから、まず水産業の棚へダッシュ、みたいな正面突破だけではそうそう回答できな…

ご指名司書の野望と苦悩

当方、比較的お年を召した方に妙に受けがよく、そういう方にご指名をいただくことがたま〜にある。いわく、こないだ調べてたあの件では助かったから、今度はこれこれについて調べたいので手伝ってほしい、とか、以前に勧めてもらった本がいたく気に入って、…

『図書館員によるビジネス課題への回答事例集』がやってきた

ビジネスレファレンス・コンクールの優秀回答事例を集めた『図書館員によるビジネス課題への回答事例集』(PDF版直リンク)が手元に届いた。コンクールには参加したものの、あっさり選に漏れた当方、優秀事例がナンボのもんじゃとばかり、早速開いてみる。 …

ソフトボールと夏休み

先日、職域のソフトボール大会があった。 純文系にしてサボり部であった当方は、おおよそスポーツ全般に疎いのだが、何しろ野郎の少ない職場、こういう催しにはたいてい駆り出される。まあ、単純に頭数要員だけど。 そして例によって、対戦相手に失礼なほど…

龍馬・竜馬・りょうま

今年、かなりたくさんのお客様が、図書館OPACの検索窓に「龍馬伝」とか、「坂本龍馬」とか入れて本を探すことだろう。 たいていの図書館では、例えば、普通に『龍馬伝 前編 (NHK大河ドラマ・ストーリー)』とかが出てくるのだけど、一部の図書館では(所蔵があ…

無料のWebデータベースは脅威? 機会?

先日、「友人から、これこれこういう引用句を聞いたのだが、その典拠を見たい、○○というスイスの詩人兼哲学者の言葉だったような気がする……」という質問を受けた。 教養高い古き良きレファレンス・ライブラリアン諸氏なら、「○○のあの言葉ね、学生のころ読ん…

なんとか半年もちました。

2010年1月より書き始めたこのブログも、何とか半年もちこたえることができました。 アクセスしてくださった皆様に、感謝いたします。ありがとうございます。 で、最近は更新も滞りがちな今日コノゴロなのですが、原因は、つい手を出してしまったDS。ちょっと…

謎かけとWebcat Plus

先日リニューアルしたWebcat Plus、業務の合間にちょこちょこと触っている。 今回のリニューアルでは、収録データベースや連携先が増え、仮想書棚や書影などのヴィジュアル面も強化、もともとウリだった(でもノイズだらけなので一部で不評だった)連想検索…

情報バラエティーとレファレンス

最近、テレビでいわゆる「情報バラエティー」を観ることが多い。 別に好きという訳でもなく、他に選択肢がない(ことが多い)ので何の気なしに観ているのだけど、こういう番組は、しばしば、視聴者からの質問やタレコミ情報を元にスタッフが調査する、という…

古地図とイノベーション

年に1〜2回程度、某市○○地区の古い地図がないですか、というお問い合わせがある。今度そこに土地を買って家を建てるので、以前は墓地だったとか、沼だったなんてことがないか確認したい、というワケ。 以前は、古い地図の利用というと、学問的な、あるいは懐…

ないこと恐怖症を超えて

司書は、本が棚にないことを恐れる。 お客様からお問い合わせがあったとき、その資料をその場で手渡せない、ということを極度に恐れる。資料を、モノとして持っていたい、それを自分が手渡したい、という思いは、もはや執着でさえある。 例えば、改正されて…

どこでもレファレンス・サービス

他部局の方と一緒に職員研修を受ける機会があるときは、なるべく参加するようにしている。人見知りな当方にとって、様々な肩書き、様々な部署の方たちと知り合いになれる、数少ない機会だ。 部署の違う見知らぬ方たちとのグループ演習には、アイスブレイク代…

情報断食のススメ

最近、Twitterのような、ものすごく早くて深い情報源が、当方の職場でも流行っている。 あいにく当方、家庭の事情により、Web利用は週末中心、携帯も音声メインで、Twitterはアカウント取っただけで放置状態。ウェブ上の最新動向からは置いてきぼりになりつ…

見本市としての図書館

先日、遅まきながら『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう―あなたの5つの強みを見出し、活かす』を読んで、自分の強みを判定してくれるというウェブ上のテスト、「ストレングスファインダー」をやってみたくなった。 でも、これをやるためには、この本のカバー裏…

図書館は人の生き死ににかかわらない? その2

承前。 本は人を動かすことができる、変えることができる。それは間違いない。 でも、図書館はどうなんだろう。図書館にある本じゃなくて、図書館そのもの、図書館という「場」や「機能」が、人の人生を変えたり、動かしたりすることってあるんだろうか。 あ…

気弱な司書にとっての“Libron Firefox Add-on 版”

前から面白いなと思っていた、Amazonのページから図書館の蔵書を検索できる“Libron”だけど、こないだからカーリルAPIに対応してパワーアップ。おまけに、FirefoxのAdd-on版が出たので、早速導入してみた(Greasemonkeyは正直、敷居が高かったのだ……)。 うわ…

インテリアとしての電子図書

ゴールデンウィーク中はどこにも行かずに、散らかった家の中の整理に明け暮れた。 特に、しばらく前から何の脈絡もなくただ突っ込んであった(!)書棚の本をようやく整理することができた。ま、整理できたのはごく一部で、屋根裏にマンガだの雑誌だの文庫本…

机貸しは悪か?

新学期も始まったばかりだというのに、図書館で勉強する高校生・大学生が多い。資格試験の問題集と睨めっこしてたり、電卓に向かってパチパチやってる社会人のお客様も多く見かける。皆、教科書や参考書、自前の問題集などを持ち込んでいる。 こういう方々に…

JDream2の活用に関する覚え書き

館内の研修で、有料データベースをテーマに短い発表をしないといけなくなったのだけど、昨年度のビジネス支援レファレンスコンクールでJDream2を使わせてもらったので、これをネタにしようと、先日からレジュメを作っている。 A4一枚のレジュメ、ほぼ仕上が…

セルフレファレンス(?)のすすめ

百姓の息子だけど家業を継がず、庭いじりにも興味がなくて、花や木の名前がとんと分からない。なので、こないだも拙宅の庭木の名前が分からなくなって困った。 植木屋さんに聞くのも恥ずかしいし(前にも一度聞いたような気がするから、ホント聞きづらい)、…

しおり紐と豚のしっぽ

書棚に本が並んだときのしおり紐(スピン)の位置が気になっている。 紐がきっちり本体に収まっていなかったり、天からぐにゃっと飛び出てたりするのは論外として、挟み込まれたしおり紐の先が、地の部分からちょろっと出ているのが、どうにも気に入らない。…

図書館の未来像が見える!『千代田図書館とは何か』

千代田図書館とは何か─新しい公共空間の形成作者: 柳与志夫出版社/メーカー: ポット出版発売日: 2010/03/02メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 70回この商品を含むブログ (15件) を見る 千代田区立千代田図書館には、リニューアル直後に一度だけ行ってみた…

猫リセット、恐るべし

さっき、『千代田図書館とは何か─新しい公共空間の形成』について、あーでもないこーでもないとうなりながら書いてたら、飼い猫が手元にふらふらやってきた拍子に、思わずブラウザバックしてしまい、さくっと下書き(2時間くらいの苦吟の成果)が電子のかな…

「ありがとう」と言われない仕事をする

職場体験学習やインターンシップに来た若者に、司書という職種の魅力を伝えようとして、「この仕事は、お客様に『ありがとう』と言っていただける機会が非常に(おそらく、公務員としてはトップレベルに)多い」ことを挙げたりする。 仕事なのに、お礼を言っ…

自分なりの解答へ向けたメモその1:公立図書館の専門性ってなんだろう?

承前。 学校(含む大学)図書館は、原則、その学校の児童・生徒・学生・教員のためにある。専門図書館は、その専門分野に携わる、あるいは関心のある人々のためにある。どちらも、そのサービス対象は比較的明確で、特定の範疇におさまりうるものだ。 一方、公共…

投げっぱなしの疑問:公立図書館の専門性って何だろう?

学校図書館に関わっておられる知人からいただいた年賀状に、「公立図書館の専門性はどこにあるのか、考えています」と書いてあって、お正月からずっと引っかかっている。 学校図書館でも専門図書館でも、まして公共図書館でもない、公立図書館の専門性って、…

福井県立図書館の「覚え違いタイトル集」、恐るべし

以前、職場の書誌データに、地人書館を他人書館と間違えてる(恥ずかしい)事例を見つけたことを記事にして、最後に思いつきで、 福井県立図書館の「覚え違いタイトル集」に採用されないかしらん(書名じゃないけど)。 他人書館、恐るべし - BEAYS なんて書い…

司書と信頼

服や靴を買うのが苦手だ。 自分の好み、みたいなものはもちろんあって、こんなのどう?好き?嫌い?って聞かれたら、何とか答えられるかもしれない。でも、その自分の「好き」が、世間的に見てどうなのか、流行りに乗っかってるのか、個性を追求してるのか、…

「高度」なレファレンスとは何か?

たぶんネットが浸透してきたことが大きいんだと思うけど、レファレンス・サービスはいろいろな意味で変容を迫られている。 当方の職場でも、レファレンス・サービスをより「高度化」させないといけない、みたいなことがよく言われる。なるほど。で、「高度」な…

お客様という呼び方

当方のお師匠さんは国文学者なのだけど、彼は、物語の登場人物に使われる呼称(名前や官位)に注目して、物語作者の意図や背景を浮かび上がらせる優れた論文をいくつも著している。 ある人がある人をどのように呼ぶか、ということは、両者の関係性に因ってい…